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第11話
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「別に、花澄がしたいことすればいいんじゃない?あ、何か欲しいものでも?」
思っていた答えではなかった。
「め、滅相もございません」
私は慌てて答えた。
「ふっ、なにそれ」
…朝から眩しい。
「す、すみません」
壱馬様の雰囲気が柔らかくなった気がするのは、気のせいだろうか。
いつの間にか敬語もなくなっている。
「昨日から悪くないのに謝りすぎだよ。謝るのが癖になってるんだろうね」
そんな風に言われたのは初めてだ。
「すみません」
私は反射的に謝ってしまった。
「ほらまた、」
彼は少し笑った。
「すみませ、…」
私は言いかけて止めた。
「まぁ、ゆっくり直していけばいいよ」
彼は優しく言った。
ゆっくり…。
その言葉に感動した。
壱馬様との関係がずっと続いていくように思えて嬉しかった。
それから、もう一度同じ間違いをした時は、ただじゃ済まさないと。お父様によく言われていたから。
ゆっくりという言葉に救われた。
物覚えが悪い私は、同じ失敗を何度も繰り返し、その度に…。
だめだめ。
あの家でのことはもう思い出さないって、昨日決めたばっかりなのに。
「あの、まだ朝食を召し上がっていないようでしたら、お作りしましょうか?」
「じゃあお願いしてもいいかな」
「もちろんです」
私ができることはこれぐらいしかないんだから。
少しでも役に立ちたいと思った。
「あ、待ってその前に」
そう言うと私の手首を掴んだ。
「壱馬様…?」
私は驚いて彼を見た。
「ちゃんと話しておかないとと思ってね」
彼は真剣な表情で言った。
「あ、はい」
確かに、注意点があるのならば聞いておかないと。
「勘違いしてると思って」
「勘違い…ですか?」
私は首をかしげた。
「俺は何か見返りを求めて花澄と婚約したわけじゃないよ」
彼の言葉に、私は驚いた。
「…え、」
利益を得るためじゃないなら、どうして私と婚約なんて...
「やっぱり、そんな風に思ってたんだね」
私の反応を見てそう言った。
「で、ですが、それなら私がここにいる意味が…」
私は戸惑いながら聞いた。
私と結婚していいことなんて何も無い。
「花澄に雑用押付けたりなんかしないよ。なんなら何もしなくていい」
「え、っと、それはどう言う…」
何もしなくていいなら私がいる意味なんて、
「ただ花澄が好きなことだけをして過ごせばいいよ」
その言葉に、さらに驚いた。
「どうして、ですか...?」
壱馬様の優しさに戸惑いながら尋ねた。
「ん?」
「どうして、私にここまで優しくしてくださるのですか」
心の中の疑問が口をついて出た。
「分からない?」
「分かりません、」
私は正直に答えた。
「口説いてるんだよ」
彼はさらりと言った。
「口説く…?」
私は驚いて聞き返した。
「うん」
口説くって、自分に興味を持ってもらえるようにアプローチするとかって、そういう認識で合ってますか?
「どうしてですか」
どうして私を?
そんなことしても壱馬様になんのメリットもない。
「花澄のことが好きだからだよ」
思っていた答えではなかった。
「め、滅相もございません」
私は慌てて答えた。
「ふっ、なにそれ」
…朝から眩しい。
「す、すみません」
壱馬様の雰囲気が柔らかくなった気がするのは、気のせいだろうか。
いつの間にか敬語もなくなっている。
「昨日から悪くないのに謝りすぎだよ。謝るのが癖になってるんだろうね」
そんな風に言われたのは初めてだ。
「すみません」
私は反射的に謝ってしまった。
「ほらまた、」
彼は少し笑った。
「すみませ、…」
私は言いかけて止めた。
「まぁ、ゆっくり直していけばいいよ」
彼は優しく言った。
ゆっくり…。
その言葉に感動した。
壱馬様との関係がずっと続いていくように思えて嬉しかった。
それから、もう一度同じ間違いをした時は、ただじゃ済まさないと。お父様によく言われていたから。
ゆっくりという言葉に救われた。
物覚えが悪い私は、同じ失敗を何度も繰り返し、その度に…。
だめだめ。
あの家でのことはもう思い出さないって、昨日決めたばっかりなのに。
「あの、まだ朝食を召し上がっていないようでしたら、お作りしましょうか?」
「じゃあお願いしてもいいかな」
「もちろんです」
私ができることはこれぐらいしかないんだから。
少しでも役に立ちたいと思った。
「あ、待ってその前に」
そう言うと私の手首を掴んだ。
「壱馬様…?」
私は驚いて彼を見た。
「ちゃんと話しておかないとと思ってね」
彼は真剣な表情で言った。
「あ、はい」
確かに、注意点があるのならば聞いておかないと。
「勘違いしてると思って」
「勘違い…ですか?」
私は首をかしげた。
「俺は何か見返りを求めて花澄と婚約したわけじゃないよ」
彼の言葉に、私は驚いた。
「…え、」
利益を得るためじゃないなら、どうして私と婚約なんて...
「やっぱり、そんな風に思ってたんだね」
私の反応を見てそう言った。
「で、ですが、それなら私がここにいる意味が…」
私は戸惑いながら聞いた。
私と結婚していいことなんて何も無い。
「花澄に雑用押付けたりなんかしないよ。なんなら何もしなくていい」
「え、っと、それはどう言う…」
何もしなくていいなら私がいる意味なんて、
「ただ花澄が好きなことだけをして過ごせばいいよ」
その言葉に、さらに驚いた。
「どうして、ですか...?」
壱馬様の優しさに戸惑いながら尋ねた。
「ん?」
「どうして、私にここまで優しくしてくださるのですか」
心の中の疑問が口をついて出た。
「分からない?」
「分かりません、」
私は正直に答えた。
「口説いてるんだよ」
彼はさらりと言った。
「口説く…?」
私は驚いて聞き返した。
「うん」
口説くって、自分に興味を持ってもらえるようにアプローチするとかって、そういう認識で合ってますか?
「どうしてですか」
どうして私を?
そんなことしても壱馬様になんのメリットもない。
「花澄のことが好きだからだよ」
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