その魔法が解ける前に

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第10話

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 朝の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋の中に柔らかな明るさをもたらしていた。

 私はゆっくりと目を開け、ぼんやりと天井を見つめた。

 やっぱり、あのまま寝ちゃったんだ。

 昨夜の出来事が頭の中でぼんやりと浮かび上がってくる。

 私の部屋じゃない。
 やっぱり、夢じゃなかったんだ。

 壱馬様の家にいて、これからずっとここに住むんだ。

 …ちょっと待って、

「今、何時だ…?」

 枕元の時計に目をやった。

 時計の針が七時を指しているのを見て、驚きと焦りが一気に押し寄せてきた。

「七時…!?」

 私は慌ててベッドから飛び起きた。

 外からは鳥のさえずりが聞こえ、窓の外の木々が風に揺れる音が微かに耳に届いたが、そんな余裕はなかった。

 体がまだ重く、眠気が完全には取れていない。
 だけど、そんなことは言ってられない。

 私は急いで服を整え、階段を駆け下りた。

 リビングへ向かう途中、心臓がドキドキと早鐘を打っているのを感じた。

 壱馬様に失礼をしてしまったのではないかという不安が募る。

 初日からなんて失態を。

 壱馬様が起きる前に朝食をと思っていたのに。
 どうかまだ起きていませんように。

 ドアを開けると、壱馬様は椅子に座って珈琲を飲みながら新聞を読んでいた。

 その姿はまるで映画のワンシーンのようで、私は一瞬見惚れてしまった。

 彼の背中はまっすぐで、優雅な雰囲気が漂っている。

 窓から差し込む朝の光が彼の髪を柔らかく照らし、まるで絵画のようだった。

「おはようございます」

 私は慌てて挨拶した。

「おはよう。よく眠れたみたいだね」

 壱馬様は穏やかに答えた。

 その声は心を包み込むようで、私は少しだけ安心した。

 怒ってはいないみたいだ。

「はい...」
「良かった」

 何これ...
 こんなの普通のカップルみたい。

「起きるのが遅くなってしまってすみません、」

 昨日、そのまま寝てしまってアラームをかけるのを忘れていた。

 いつも同じ時間に起きていたから、普段はアラームがなる前に目が覚めていたのに、

 すごく疲れていたんだろうな。
 いつもより二時間も遅く起きてしまった。

「遅くないよ。まだ七時なんだから」

 七時は…寝坊じゃないのか。
 家では、いつも六時には起きて家事をしていた。

 昔、熱が出て八時まで寝ていた時、水をかけられて起こされたことがあった。

 …また嫌なことを思い出してしまった。

「あ、の」

「ん?」

 壱馬様が私に視線を向ける。

「私は何をすれば...」


 私はおずおずと尋ねた。

 家事をするにも、どこに何があるのかまだ把握出来ていない。


 だけど、聞いた瞬間に後悔した。


 そんなことぐらい自分で考えて出来ないのか。と呆れられてしまうと思ったから。
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