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2話 都市伝説
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2話 都市伝説
境井夢織Side
「いただきます!」
かりかりさくさくのハムチーズサンド! 今日の朝食は食パン&ハム&チーズとサラダとミルク! 朝はとにかく時間がないから、時短で済ませる毎日。具材さえ用意していれば、パンにばさばさとのっけて完成。チーズがとろりととろけて、こんがり焼けたハムや食パンと相性抜群。私はじっくり焼いて、噛んだときの食感や焦げを楽しみたい人。
「今日は小テストがあるんだっけ?」
「うん。自信はないけど頑張るね」
「大丈夫。夢織ならできるよ。俺が信じてる」
向かいに座って微笑む美青年。小さいころから仲の良い結城明利くん。兄・十織の友人で、今ではわけあって一緒に暮らしている。お兄ちゃんと明利は今年18歳の高校3年生で、私は13歳の中学1年生。学年や年齢は違うけど、同じ中高一貫校に通う生徒だ。
明利とは、お兄ちゃんを通じて仲良くなった。顔立ちは整っており、高校でも目立つ存在。小中学生時代、走ることが好きで陸上部で活躍していた。髪は明るめの黒で、柔らかい質感。前髪を軽く流し、少し無造作にしている。瞳は深い茶色で、笑うと優しく細くなる。明るく社交的で、誰とでもすぐに打ち解ける。
気配り上手で、場を盛り上げるムードメーカー。責任感が強く、アルバイトを掛け持ちして生活を支えている。
明利との生活を続けてから3年ほど経つ。あのころ、明利は15歳で、私は10歳だった。それで、どうしてふたりでいるのかというと……明利の家族が、音信不通だったり亡くなったりしてひとりだったから。そして、私の家族は……ある朝忽然と姿を消してしまった。今も生きているのか、死んでしまったのか、わからない。だけど、時間の流れだけは正直だ。3年。3年もかかったから、もしかして……3人は本当に命を失ったのかもしれない。ひとりになった私たちは、一緒に生活することにした。有り余るほどのお金はないから、明利がアルバイトを掛け持ちして暮らしを支えている。この年、本当に家族が戻ってこなかったら、明利が就職してもっとお金を稼ぐと言っていた。私は……今の生活に不満があるわけじゃないけど、家族が戻ってこないことが、不明瞭な生死が、昨日も今日もあしたも怖い。
――都市伝説。
私の家族も、そうじゃないだろうか。
パパ、ママ、お兄ちゃん。
そういう話はよく聞いていた。何の罪もない家庭を狙って、家族を攫い、ひとりだけ残すこと。その類のようだ。なぜって、あのときだれかが家に押し入った様子はなかった。家具の配置は昨夜のまま、金品は盗まれていない。家族だけ。家族だけが戻ってこなかった。
境井夢織Side
「いただきます!」
かりかりさくさくのハムチーズサンド! 今日の朝食は食パン&ハム&チーズとサラダとミルク! 朝はとにかく時間がないから、時短で済ませる毎日。具材さえ用意していれば、パンにばさばさとのっけて完成。チーズがとろりととろけて、こんがり焼けたハムや食パンと相性抜群。私はじっくり焼いて、噛んだときの食感や焦げを楽しみたい人。
「今日は小テストがあるんだっけ?」
「うん。自信はないけど頑張るね」
「大丈夫。夢織ならできるよ。俺が信じてる」
向かいに座って微笑む美青年。小さいころから仲の良い結城明利くん。兄・十織の友人で、今ではわけあって一緒に暮らしている。お兄ちゃんと明利は今年18歳の高校3年生で、私は13歳の中学1年生。学年や年齢は違うけど、同じ中高一貫校に通う生徒だ。
明利とは、お兄ちゃんを通じて仲良くなった。顔立ちは整っており、高校でも目立つ存在。小中学生時代、走ることが好きで陸上部で活躍していた。髪は明るめの黒で、柔らかい質感。前髪を軽く流し、少し無造作にしている。瞳は深い茶色で、笑うと優しく細くなる。明るく社交的で、誰とでもすぐに打ち解ける。
気配り上手で、場を盛り上げるムードメーカー。責任感が強く、アルバイトを掛け持ちして生活を支えている。
明利との生活を続けてから3年ほど経つ。あのころ、明利は15歳で、私は10歳だった。それで、どうしてふたりでいるのかというと……明利の家族が、音信不通だったり亡くなったりしてひとりだったから。そして、私の家族は……ある朝忽然と姿を消してしまった。今も生きているのか、死んでしまったのか、わからない。だけど、時間の流れだけは正直だ。3年。3年もかかったから、もしかして……3人は本当に命を失ったのかもしれない。ひとりになった私たちは、一緒に生活することにした。有り余るほどのお金はないから、明利がアルバイトを掛け持ちして暮らしを支えている。この年、本当に家族が戻ってこなかったら、明利が就職してもっとお金を稼ぐと言っていた。私は……今の生活に不満があるわけじゃないけど、家族が戻ってこないことが、不明瞭な生死が、昨日も今日もあしたも怖い。
――都市伝説。
私の家族も、そうじゃないだろうか。
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