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3話 殺してくれ
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3話 殺してくれ
俺はセウェルス・フォールディング。フォールディング侯爵の三男として生まれた。兄ふたり、姉3人、妹ひとり弟ふたりの11人家族。父は軍の大臣で、母は他領の長の娘。国王陛下に忠誠を誓い、代々軍事力に資源を投入する巨大な家だ。中でも、ふたりの兄は頭脳明晰で、参戦歴のある猛者。申し分ない学力と、後継者としての優秀な知能や実績。3人の姉は既に公爵や隣国の王族と結婚し、家庭を築いた。兄と姉5人はそれぞれ人間性を育てて成長し、適切な居場所を見つけた。弟妹3人への縁談はよりどりみどり。今フォールディング家に残るのは、両親のほかに、弟妹3人と俺の6人。半数がいなくなった屋敷は無駄に広くてよく空気が通る。両親は揃って兄ふたりを褒め、弟妹に理想像を押し付ける。
俺はフォールディング家の汚点で恥だ。輝かしい実績も取り柄もなく、内向的で部屋に引きこもってばかり。酷い喘息持ちで、激しい運動はできない。軍の規律でも弾かれ、家族や使用人から汚らわしい者として扱われる。信頼できる友人も、幸せを願う恋人もいない。今年で20歳になったけど、「先が短いだろう」と敬遠する人がほとんどだった。家族も、俺も、なぜ今も生きているのかよくわからない。得体の知れない気持ち悪さが俺を取り巻いた。
閉じこもって研究しているとき、健康に良いという料理を食べているとき、アカデミーのライブラリーで本を読んでいるとき、突然手が止まる。
俺は何のために生きているのだろうか。
兄のように、聡明で、体格に恵まれ、多くの人から慕われる人。姉のように、政略結婚という勤めを果たし、己を磨く美しい貴婦人。弟妹のように、学ぶ姿勢を持って、足りないものを補う、未来ある人。俺はどれでもない。何ひとつ役割をこなせていない。それでも両親が俺を切り捨てないのは、「勝手に死ね」という無関心な気持ちが強いからだろう。俺だって、息が詰まるたび、早く逝きたいと願っている。だけどなぜか俺は死なずに済んで、また同じリズムで息をして生きている。死のうにも、未知の恐れが両手を縛り付けて動きを止める。
なんでなんだよ。
身体が死にそうなときは心が引き止めて、心が死にそうなときは身体が引き止める。
生き地獄はやめてくれ。俺はもう十分なんだ。医者の余命よりも倍以上生きたじゃないか。何もやりたくない。何も聞きたくない。何も見たくない。だれでもいい、いつでもいい。ひとおもいに、ひと振りで。
「殺してくれ……」
目の上に置いた右手。指と指の隙間から、一筋の涙があふれた。
俺はセウェルス・フォールディング。フォールディング侯爵の三男として生まれた。兄ふたり、姉3人、妹ひとり弟ふたりの11人家族。父は軍の大臣で、母は他領の長の娘。国王陛下に忠誠を誓い、代々軍事力に資源を投入する巨大な家だ。中でも、ふたりの兄は頭脳明晰で、参戦歴のある猛者。申し分ない学力と、後継者としての優秀な知能や実績。3人の姉は既に公爵や隣国の王族と結婚し、家庭を築いた。兄と姉5人はそれぞれ人間性を育てて成長し、適切な居場所を見つけた。弟妹3人への縁談はよりどりみどり。今フォールディング家に残るのは、両親のほかに、弟妹3人と俺の6人。半数がいなくなった屋敷は無駄に広くてよく空気が通る。両親は揃って兄ふたりを褒め、弟妹に理想像を押し付ける。
俺はフォールディング家の汚点で恥だ。輝かしい実績も取り柄もなく、内向的で部屋に引きこもってばかり。酷い喘息持ちで、激しい運動はできない。軍の規律でも弾かれ、家族や使用人から汚らわしい者として扱われる。信頼できる友人も、幸せを願う恋人もいない。今年で20歳になったけど、「先が短いだろう」と敬遠する人がほとんどだった。家族も、俺も、なぜ今も生きているのかよくわからない。得体の知れない気持ち悪さが俺を取り巻いた。
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俺は何のために生きているのだろうか。
兄のように、聡明で、体格に恵まれ、多くの人から慕われる人。姉のように、政略結婚という勤めを果たし、己を磨く美しい貴婦人。弟妹のように、学ぶ姿勢を持って、足りないものを補う、未来ある人。俺はどれでもない。何ひとつ役割をこなせていない。それでも両親が俺を切り捨てないのは、「勝手に死ね」という無関心な気持ちが強いからだろう。俺だって、息が詰まるたび、早く逝きたいと願っている。だけどなぜか俺は死なずに済んで、また同じリズムで息をして生きている。死のうにも、未知の恐れが両手を縛り付けて動きを止める。
なんでなんだよ。
身体が死にそうなときは心が引き止めて、心が死にそうなときは身体が引き止める。
生き地獄はやめてくれ。俺はもう十分なんだ。医者の余命よりも倍以上生きたじゃないか。何もやりたくない。何も聞きたくない。何も見たくない。だれでもいい、いつでもいい。ひとおもいに、ひと振りで。
「殺してくれ……」
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