血に塗れた氷の騎士

fireworks

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9話 違和感

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9話 違和感
「はじめまして。ブレイカ・ストローマと申します」
「こちらこそはじめまして。セウェルス・フォールディングです」
 ついに、婚約者のブレイカ・ストローマと顔合わせする日がやってきた。謎の人物について結論が出ることなく、特に何も起きないまま今日を迎えた。
 婚約、結婚、死ぬまで、生涯ひとりのパートナーを愛することは、スレートヴィス王国の法律で定められている。爵位ある貴族、最高権力者の王族でさえ重婚は禁止。とはいえ愛人を置くことは禁じられていない。爵位や財産の継承不可というデメリットがあっても、遊びたい人はそばに置き、条件を呑む。両親や兄姉はそういう人ではないし、そのように教わったこともない。弟妹だってきっとそうする。
 周囲の関係性をたどるとよくわかる。恋愛結婚なんて夢のまた夢で、政略結婚のほとんどに愛がない。政治的あるいは経済的な駆け引きと子孫を残すため。俺は能無しだけど、両親の間に生まれた以上、自分の立ち位置と役割を理解している。
 くだらない理想像なんかではなくて、ただ――。
「あなたのことはよく調べました。家庭教師をつけず、王立アカデミーに通っていたのですね。飛び級でいくつかの試験をパスして卒業したとか……。よく勉強したのですね」
「……」
「今は魔法薬草学の研究をなさっているとか。停滞気味と伺いましたが、これまでどんな成果を出しましたか?」
「……」 
 なぜだか、胸の奥が気持ち悪い。
 ブレイカ・ストローマ。食品の輸出入に力を入れる商業一家、ストローマ家の末の娘、4女。既に、次期後継者は長女の夫と決まっている。両親から大層かわいがられた女性だと聞いたけど、なんというか、噂通りの人だ。
 ふわりと揺れるなめらかな茶髪に、新緑を思わせる緑色の瞳を持つ女性。夏の木々と葉が思い浮かぶ。化粧は赤く濃く、素を隠す仮面をつけているみたいだ。つり上がった切れ長の瞳に、象徴的なアイライナー。膨らんだドレスの裾、あしらわれたレースとリボン。陽の光に照らされた大小様々な宝石。髪飾り、イヤリング、ネックレス、ブレスレット、指輪、ハイヒール。
「ご病気を煩っていると聞きましたが……」
 悪い意味で、笑い方が俺の両親と似ている。目が笑っていない。作られたものだと瞬時に理解できる。
「お会いできて光栄です。……」
 それでも、この場を提供し時間を割いてくれたことには変わりない。ストローマ家の別邸の一室で、小さな茶会に参加した。日の当たらないところで、1時間と制限を設けて。ストローマ家自慢の紅茶と菓子をいただき、一問一答の続きのない話をした。両親2組はフォールディング邸で、何か別の話をしているだろう。
 どうせマイナスな状態から始まった関係だ、これ以上下げることはないように。違和感は見て見ぬふりして、目につかないところに放っておいた。
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