血に塗れた氷の騎士

fireworks

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22話 変化

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22話 変化
 ……俺には足りないものが多すぎる。階段を上っただけで息切れして、最悪息が詰まる貧弱な身体。すぐに自責して、その存在を呪うような脆い心。いい加減になって、薬に逃げる悪い癖。殻に引きこもり、外へ出ようとしなかった過去。そのくせ普遍的な幸せがほしいと願い、何もしなかった怠惰な性格。適当に服を選び、見た目に頓着しない適当さ。いつまでも子供気分で、失った過去を再現しようともがく哀れな姿。
 果たして、今から変われるだろうか? いや、変わらなければいけない。
 フローリアが現れて、良い兆しが見えたのだから。
 今まで極力アカデミーに行かないようにしていたが、平日は毎日行くようになった。最初は学園長の言葉を再現しようと、仕事を教えていただけ。それ以上の意味なんてなかった。求めることもなかった。ただ、朝や休憩時間に話をしているだけ。彼女が先に話し始めて、会話を広げていく。気が重くなくて、居心地がいい。言葉に詰まっても待ってくれるし、すべてのことに「はい」と頷かなくてもいい。一方的で圧力のある命令ではなくて、ちゃんと会話をしてくれるから。こんな初歩的なことさえ嬉しくて、舞い上がってしまう。
 こういう気持ちを、何というのだろうか? 本にそれらしきことは書いていなかった。友達というには遠すぎるし、恋人にしてはぎこちない。ただの同僚でしかないが、気を使いすぎない関係性に満足していた。
 論文をまとめているとき、加筆修正しているとき、実験しているとき、ぼーっとしているとき、寝る前、なんとなく頭に彼女が浮かんだ。
 婚約パーティーが終わって3ヶ月経つころ、再びストローマ邸でパーティーを開催することが決まった。あれから一度もブレイカやその使用人と話していないけど、着々と準備が進んでいると聞いた。半年とある程度余裕があったから、マニュアルに沿ってひとつひとつ業務を行っている、と。
 華々しいパーティーに、堅苦しいスーツやドレス。場数を踏んでいないから、緊張して身体が強張るのは当たり前。ここで嫌になるのではなく、乗り越えてやるという強い意思を持つこと。ただ逃げているだけじゃ、いつまでも俺は変われないままだ。
「お久しぶりです」
「ええ」
 そんな期待は、一瞬で打ち砕かれることになる。
 ブレイカと顔を合わせた途端、抱えていた意思は根元から崩れ落ちる。雰囲気が危うい。両親のそれと同じ。拒絶的で、排他的で、有無を言わせない。この人の目を、まっすぐに、見られない。きらびやかなドレスを身にまとい、鮮やかにメイクし、優雅に微笑む。まばゆいシャンデリアが彼女を照らして、この会場にいるだれよりも目立つ侯爵令嬢。高尚で、美しく、プライドの塊。
「少しずつ暑くなってきていますが、最近はどのように……」
 ブレイカは最後まで聞くことなく、裾を持って頭を下げた。
「あちらに友人がいますので失礼いたします」
「はい……」
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