血に塗れた氷の騎士

fireworks

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23話 嘘つき

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23話 嘘つき
 パーティーの間、ずっと俺はひとりだった。婚約者のブレイカ、主催者のストローマ夫妻からも遠ざけられたから。参加者からも冷たい瞳で見られているような気がした。俺は言葉を失い、意味も失い、最終的に自分も失う。
 でも平気だ。独りなんて慣れたから。今更どうこう言う問題ではない。俺は自分の意思で社交界に参加しなかったし、ブレイカにも興味を持たなかった。その代償と思えば、受け入れられる。独りだからといって、あたかも悲劇の主人公を演じてはいけない。選んだのは自分だ。
 会場の隅に立ち、アルコールも炭酸もないぶどうジュースを飲んだ。こんなところにいたら、話しかけられないし、だれの目にも留まらない。ひとりは居心地が良いはずなのに、大勢に囲まれるこういう場では、とんでもなく息がしづらい。
 味は可もなく不可もなく。美味しいと思えば美味しいもの。そう。好きなものは? 忘れてしまった。いや、そんなものなかったんだ。
 俺は、どこにもいない。何者でもない。何にもなれなかった。自業自得。自画自賛。因果応報。すべては無駄だった。
(ここにフローリアがいてくれたら……)
 飲み干したグラスを、回収するテーブルに置き、息を鎮めた。瞬きをすると、目がぴりついて痛かった。軽くこすると睫毛が入ったとわかり、意味もなく眺めていた。
「聞きましたわよブレイカ嬢! まさか、熱々な出会いをして結婚するなんて!」
「私も耳にしました! 両親が反対する中での、信念を貫いた愛の形! 素晴らしいですわ!」
「恋愛結婚だなんて羨ましいです。情熱的な恋でしたのでしょう?」
 ブレイカの友人取り巻きたちは、彼女の体験した激動の恋愛物語をこぞって称賛した。その中心にいるブレイカは微笑み、話に花を咲かせる。彩りを添えるために、ありもしないことを平気で吐く。
 ブレイカはをついている。
 熱々な出会いなんてしていないし、両家合意のもと政略結婚をするというのに、恋愛結婚のわけがない。それでも友人たちがこの話題を持ってきて、ブレイカが否定しないということは、これが社交界の噂なのか?
 いや、その相手が俺ならば嘘だけど、俺ではないなら、ありえる話かもしれない。でも、次の瞬間にはその考えは破綻した。我が国、スレートヴィス王国では重婚や浮気が禁じられている。王族も貴族も関係なく、全国民禁止。婚約発表パーティーを堂々と開いて、婚約を宣言して、ほかの者がいました……なんて話は法律違反だ。どちらにしても、ブレイカは嘘をついている。
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