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1章 いびつなこころ
26話 噂
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26話 噂
一度に入ってくる情報が多すぎる。離婚、裁判、再婚? どれも納得できるものではない。衝撃と混乱が高まったせいで、強気な言葉を使ってしまった。
「離婚はしません。死んでほしくもありません。お荷物でも邪魔でもないのです。……ただ――」
続きの言葉は言えなかった。
その後、ノナに出ていってほしいと頼まれ、壁に寄りかかって座り込んだ。使用人と医者が彼女についている。心配することは何もないはずだ。
私が悪かった。どうしてそんなふうに思わせてしまったのだろう。離婚したいだなんて、死んでしまいたいだなんて、再婚してください、なんて。目覚めたくなかったと言わんばかりの絶望した顔。ひとりで、冷たいところで、薬に手を伸ばして、溺れて。痛かっただろう。苦しかっただろう。心は傾いていても、身体は息をしていたはずだ。――都合良く解釈してしまうが。そう思っていないと理性を保っていられない。泣きたいのは、私じゃなくてノナだ。面影を対処できないばかりに。私のせいだ。私のせいで、彼女を暗い闇へと放置したまま時間を進めようとしている。
彼女にプロポーズしたこと、結婚式を挙げたこと、アンブラが産まれたこと、彼女と過ごした日常が鮮明に思い出される。すべてが順調ではなかったが、流れるように思い出を重ねていった。はじめから間違っていたと言いたいのか? 私に会うべきじゃなかったとか? 助けてほしくなかった、殺してほしかった、なんて言われたら胸が張り裂けるほどつらい。どんな形であれ、過去のお陰で今があるから。否定したくない。否定されたくない。ああ、もう、どうしようもない。
「ヴェロリアン辺境伯!」
「はい」
「領地の様子はいかがですか?」
社交界という集まりにうんざりしていた。根掘り葉掘りプライベートなことを聞かれる。ノナが話せたときも呆れていたが、彼女が姿を見せなくなったらさらに嫌気が差した。やたらと、しつこく、彼女のことを聞かれる。要らぬ世話。「お元気?」だの「どうして参加されないのですか?」「噂を聞きましたけど?」だの「お世継ぎは?」だのうるさい。部外者の口はよく回る。そして、彼らが好む標的は、ノナのような、負の側面が目立ちすぎている人。この場に参加しない、言い返さない人。
本当はここにいたくないが、仕事だから行かないわけにいかない。他領との取引、貿易、情報収集を捨てられないから。
「ところで、国王陛下の政策は……」
「いずれここも血塗れになりますぞ」
「今が華ですな」
「早めに規制をしておかなければ」
「徴兵令が出されるぞ」
ここに――。
一度に入ってくる情報が多すぎる。離婚、裁判、再婚? どれも納得できるものではない。衝撃と混乱が高まったせいで、強気な言葉を使ってしまった。
「離婚はしません。死んでほしくもありません。お荷物でも邪魔でもないのです。……ただ――」
続きの言葉は言えなかった。
その後、ノナに出ていってほしいと頼まれ、壁に寄りかかって座り込んだ。使用人と医者が彼女についている。心配することは何もないはずだ。
私が悪かった。どうしてそんなふうに思わせてしまったのだろう。離婚したいだなんて、死んでしまいたいだなんて、再婚してください、なんて。目覚めたくなかったと言わんばかりの絶望した顔。ひとりで、冷たいところで、薬に手を伸ばして、溺れて。痛かっただろう。苦しかっただろう。心は傾いていても、身体は息をしていたはずだ。――都合良く解釈してしまうが。そう思っていないと理性を保っていられない。泣きたいのは、私じゃなくてノナだ。面影を対処できないばかりに。私のせいだ。私のせいで、彼女を暗い闇へと放置したまま時間を進めようとしている。
彼女にプロポーズしたこと、結婚式を挙げたこと、アンブラが産まれたこと、彼女と過ごした日常が鮮明に思い出される。すべてが順調ではなかったが、流れるように思い出を重ねていった。はじめから間違っていたと言いたいのか? 私に会うべきじゃなかったとか? 助けてほしくなかった、殺してほしかった、なんて言われたら胸が張り裂けるほどつらい。どんな形であれ、過去のお陰で今があるから。否定したくない。否定されたくない。ああ、もう、どうしようもない。
「ヴェロリアン辺境伯!」
「はい」
「領地の様子はいかがですか?」
社交界という集まりにうんざりしていた。根掘り葉掘りプライベートなことを聞かれる。ノナが話せたときも呆れていたが、彼女が姿を見せなくなったらさらに嫌気が差した。やたらと、しつこく、彼女のことを聞かれる。要らぬ世話。「お元気?」だの「どうして参加されないのですか?」「噂を聞きましたけど?」だの「お世継ぎは?」だのうるさい。部外者の口はよく回る。そして、彼らが好む標的は、ノナのような、負の側面が目立ちすぎている人。この場に参加しない、言い返さない人。
本当はここにいたくないが、仕事だから行かないわけにいかない。他領との取引、貿易、情報収集を捨てられないから。
「ところで、国王陛下の政策は……」
「いずれここも血塗れになりますぞ」
「今が華ですな」
「早めに規制をしておかなければ」
「徴兵令が出されるぞ」
ここに――。
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