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1章 いびつなこころ
31話 3年前
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31話 3年前
「あの……ルク……」
「?」
「話したいことがあって……」
3年前、彼女から2人目を提案され、断ったことがある。彼女は何かに怯え、怖がっているように見えた。当時は、そこまで気に留めなかったが……。
「アンブラがいるから大丈夫だよ」
「でも……」
このときはアンブラがいたから、無理をする必要はないと思った。2人目がいる幸せと、産んで育てることを天秤にかけて、消極的な考えだった。命がけでアンブラを産んでくれたのに、また同じ苦痛を与えることは嫌だから。産むのは私じゃなくてノナだから、慎重に決めないと。
「私は大丈夫よ。兄弟ができれば、きっとあの子も喜ぶわ」
彼女は控えめに笑い、私に抱きつき、キスした。ベッドで寄り添って、彼女に触れる。
「少し暗くして? 明るいところは苦手なの」
文字を読むための明るさから、瞳の色が輝くくらいの暗さに落とす。
その日は素敵で、優しい夜になった。
しかし、太陽が昇る前、彼女はひとり起きてつぶやいた。瞳は揺れ、睫毛が震える。頭を抱え、唇を噛み、頬に爪を立てて引っかいた。
「次は……次こそ……」
数カ月後、彼女の日課であるティーパーティーに参加した。暖かい春。花びらが風に吹かれて踊る季節。うららかな陽気。眩しい太陽が地面を照らし、花を咲かせる。いつも彼女が先に来るのに、今日は予定よりも少し時間が遅れた。彼女は到着すると、長い裾を持ち上げて頭を下げる。
「遅れてごめんなさい」
「大丈夫だよ。始めよう」
「うん」
しばらくして、紅茶と茶菓子が運ばれてくる。彼女はポットを持ち、ティーカップに紅茶を注ぐ。ふわりと柔らかな香りが浮かんだ。マフィン、マドレーヌ、マシュマロなど、彼女の好みのものがテーブルに並ぶ。
「どうかしたの?」
それなのに、彼女は口元を手で隠して、頭を押さえた。何があったのか聞いてみると、こう返される。
「最近、めまいと吐き気がして……」
「おめでとうございます。ご懐妊ですね」
「……本当ですか?」
「ええ」
彼女は妊娠していた。医者が言ったのだから確かなことだ。ふたりで喜びを分かち合い、彼女とお腹の子の健康を祈った。
「男の子かな? 女の子かな?」
「どちらでも嬉しいね」
「名前は何にする?」
「お花の名前がいいわ。ヴァイオレットとか、ローズマリーとか」
ずっと楽しみにしていた。どんな子が生まれるのかと。男の子と女の子の名前を考えるときも楽しかった。
夜眠る前に、彼女がお腹の子に読み聞かせをした。私はその隣で寄り添って、心地よい声に身を委ねた。
「あ、今お腹を蹴ったわ」
「本当? きっと、ママの声が好きなんだよ」
「うふふ」
日に日に彼女のお腹が膨らむにつれ、命の尊さを知った。守らなければいけないものができると、自然とやる気が出てくる。仕事も捗り、彼女と過ごす時間をより一層大事にした。生まれてくる日が楽しみだ。
「あの……ルク……」
「?」
「話したいことがあって……」
3年前、彼女から2人目を提案され、断ったことがある。彼女は何かに怯え、怖がっているように見えた。当時は、そこまで気に留めなかったが……。
「アンブラがいるから大丈夫だよ」
「でも……」
このときはアンブラがいたから、無理をする必要はないと思った。2人目がいる幸せと、産んで育てることを天秤にかけて、消極的な考えだった。命がけでアンブラを産んでくれたのに、また同じ苦痛を与えることは嫌だから。産むのは私じゃなくてノナだから、慎重に決めないと。
「私は大丈夫よ。兄弟ができれば、きっとあの子も喜ぶわ」
彼女は控えめに笑い、私に抱きつき、キスした。ベッドで寄り添って、彼女に触れる。
「少し暗くして? 明るいところは苦手なの」
文字を読むための明るさから、瞳の色が輝くくらいの暗さに落とす。
その日は素敵で、優しい夜になった。
しかし、太陽が昇る前、彼女はひとり起きてつぶやいた。瞳は揺れ、睫毛が震える。頭を抱え、唇を噛み、頬に爪を立てて引っかいた。
「次は……次こそ……」
数カ月後、彼女の日課であるティーパーティーに参加した。暖かい春。花びらが風に吹かれて踊る季節。うららかな陽気。眩しい太陽が地面を照らし、花を咲かせる。いつも彼女が先に来るのに、今日は予定よりも少し時間が遅れた。彼女は到着すると、長い裾を持ち上げて頭を下げる。
「遅れてごめんなさい」
「大丈夫だよ。始めよう」
「うん」
しばらくして、紅茶と茶菓子が運ばれてくる。彼女はポットを持ち、ティーカップに紅茶を注ぐ。ふわりと柔らかな香りが浮かんだ。マフィン、マドレーヌ、マシュマロなど、彼女の好みのものがテーブルに並ぶ。
「どうかしたの?」
それなのに、彼女は口元を手で隠して、頭を押さえた。何があったのか聞いてみると、こう返される。
「最近、めまいと吐き気がして……」
「おめでとうございます。ご懐妊ですね」
「……本当ですか?」
「ええ」
彼女は妊娠していた。医者が言ったのだから確かなことだ。ふたりで喜びを分かち合い、彼女とお腹の子の健康を祈った。
「男の子かな? 女の子かな?」
「どちらでも嬉しいね」
「名前は何にする?」
「お花の名前がいいわ。ヴァイオレットとか、ローズマリーとか」
ずっと楽しみにしていた。どんな子が生まれるのかと。男の子と女の子の名前を考えるときも楽しかった。
夜眠る前に、彼女がお腹の子に読み聞かせをした。私はその隣で寄り添って、心地よい声に身を委ねた。
「あ、今お腹を蹴ったわ」
「本当? きっと、ママの声が好きなんだよ」
「うふふ」
日に日に彼女のお腹が膨らむにつれ、命の尊さを知った。守らなければいけないものができると、自然とやる気が出てくる。仕事も捗り、彼女と過ごす時間をより一層大事にした。生まれてくる日が楽しみだ。
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