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2章 うんめいにみちびかれて
48話 病気
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48話 病気
「いただきます」
「……」
「夕食はシチューにしました。いかがですか?」
1時間30分後、私は自分の足でダイニングに向かい、椅子に座っていた。目の前にシチュー、パン、サラダ、ミルクが並べられている。屋敷にいたときとは随分違う。なんというか、素朴な料理だ。品数も量も少ない。見た目は……その……大きな特徴がないし。かといって貧しいとも思わない、これが市民の「普通」なのだろうか。
「……」
――見られている。変なことはできない。
スプーンを持ち、慎重にシチューをすくった。湯気が出て温かいシチュー。口を開けて咀嚼する。じゃがいも、にんじん、玉ねぎは柔らかく食べやすい大きさに切られている。クリームはなめらかで甘い。しっかり噛んで飲み込んだ。
(美味しいです)
そう伝えると、向かい側に座っていたガスは手をたたいて喜んだ。
「嬉しいです! たくさん作ったのでたくさん食べてくださいね」
「食事に集中して」
「ハイ」
も、パールに声をかけられてすぐにスプーンを持つ。ガスはお喋りが好きみたい。無言になるかと思ったら、まだ続きがあった。
「今日はもう遅いので、今後のことはあした考えましょう」
「……」
今後のこと、か……。……浮かばない。進むことを諦めた私に未来があるとは思っていないし、幸せになる資格もない。今更話すことなどあるのだろうか。知り合ったばかりの他人に。
「実は、お嬢様が目覚めるまでに3日かかりました。低体温症になっていましたが、今は治っていると思います」
「……!?」
日付の感覚がなかったから気にしていなかったけど、そんなに経っていたとは。長い話になりそうだから、手を膝の上に置いた。
「私は、過去に戦場で治療していた医師です。一通り検査して、異常は見つかりませんでした。今何か身体に問題はありますか?」
「……」
いいえ、と首を横に振った。パールは頷き、話を進める。
「ふたつ気になることがありまして。ひとつは背中や腕の傷。もうひとつは"気"の問題です」
「……」
心当たりがないことはないけど、説明することが難しい。簡単に話せるものでもないし……。悩むところだ。ワンピースの裾を握り、口の中を噛む。
(どちらもずっと昔からある傷です。今の出来事とは関係ありません)
「心の面影」は他国の人間は発症しない。つまり、見ようとしても診られない。それゆえに厄介な病気だ。とはいえ、仮に知っていたとしても、その治療法をこの人たちが見つけられるわけないだろう。生まれ持った環境、子供を失ったという事実は到底理解できるものではないから。
「そうですか……」
パールは俯きがちに言った。
「いただきます」
「……」
「夕食はシチューにしました。いかがですか?」
1時間30分後、私は自分の足でダイニングに向かい、椅子に座っていた。目の前にシチュー、パン、サラダ、ミルクが並べられている。屋敷にいたときとは随分違う。なんというか、素朴な料理だ。品数も量も少ない。見た目は……その……大きな特徴がないし。かといって貧しいとも思わない、これが市民の「普通」なのだろうか。
「……」
――見られている。変なことはできない。
スプーンを持ち、慎重にシチューをすくった。湯気が出て温かいシチュー。口を開けて咀嚼する。じゃがいも、にんじん、玉ねぎは柔らかく食べやすい大きさに切られている。クリームはなめらかで甘い。しっかり噛んで飲み込んだ。
(美味しいです)
そう伝えると、向かい側に座っていたガスは手をたたいて喜んだ。
「嬉しいです! たくさん作ったのでたくさん食べてくださいね」
「食事に集中して」
「ハイ」
も、パールに声をかけられてすぐにスプーンを持つ。ガスはお喋りが好きみたい。無言になるかと思ったら、まだ続きがあった。
「今日はもう遅いので、今後のことはあした考えましょう」
「……」
今後のこと、か……。……浮かばない。進むことを諦めた私に未来があるとは思っていないし、幸せになる資格もない。今更話すことなどあるのだろうか。知り合ったばかりの他人に。
「実は、お嬢様が目覚めるまでに3日かかりました。低体温症になっていましたが、今は治っていると思います」
「……!?」
日付の感覚がなかったから気にしていなかったけど、そんなに経っていたとは。長い話になりそうだから、手を膝の上に置いた。
「私は、過去に戦場で治療していた医師です。一通り検査して、異常は見つかりませんでした。今何か身体に問題はありますか?」
「……」
いいえ、と首を横に振った。パールは頷き、話を進める。
「ふたつ気になることがありまして。ひとつは背中や腕の傷。もうひとつは"気"の問題です」
「……」
心当たりがないことはないけど、説明することが難しい。簡単に話せるものでもないし……。悩むところだ。ワンピースの裾を握り、口の中を噛む。
(どちらもずっと昔からある傷です。今の出来事とは関係ありません)
「心の面影」は他国の人間は発症しない。つまり、見ようとしても診られない。それゆえに厄介な病気だ。とはいえ、仮に知っていたとしても、その治療法をこの人たちが見つけられるわけないだろう。生まれ持った環境、子供を失ったという事実は到底理解できるものではないから。
「そうですか……」
パールは俯きがちに言った。
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