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2章 うんめいにみちびかれて
49話 傷跡
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49話 傷跡
食事が終わって1時間後、入浴の支度をした。必要なものや洋服はこの家のものを借り、バスルームを案内される。その間、家の内装を頭に入れた。ブルートン家は2階建て、ふたり暮らし、3つの部屋、キッチン、バスルーム、ダイニング、リビング。よくわからないけれど、これが一般的な家なのだろうか。案内したパールは振り向き、頭を下げた。
「何か手伝いは必要でしょうか?」
(結構です)
「……ごゆっくりお過ごしくださいませ」
全身を洗った後、湯船に浸かる。足を伸ばし、髪を浴槽の縁にのせた。バスタブであの川を渡ろうとしたことが嘘のように、問題なく入浴できる。
「……」
不思議な人たちに、不思議な夕食。屋敷を出たときに描いた計画は白紙になった。かといって新しいものが出てくることもなく、頭の中が空っぽだ。今更生きようと思えないし、未来がない。
お湯をすくうと、僅かな隙間からぽろぽろこぼれた。
そうだ。世界は絶望だ。
バスルームを出て、頭の天辺から爪先まで拭いた。目の前にメイク用の鏡があって、向かい側の大きな姿見に背中が写る。薄紫色の痣や火傷の跡。痛みはないけど、時折痒くなる。感情や人とのつながりは永遠でないとしても、この傷は永遠に残るのだろう。
パールのナイトウェアに着替える。嗅いだことのない、固有のにおいを羽織るイメージ。私が着ていた洋服は、目覚めた部屋のサイドテーブルに置いてあった。
着替え完了。スリッパを履き、バスルームを出て廊下を歩いた。この後やるべきことは特にないから、あの部屋に行って就寝しよう。その前に挨拶しようと思い、リビングへ向かった。ドアノブに手を乗せると、室内から夫妻の声が聞こえる。
「そういえば、あれはどこにしまった?」
「サイドテーブルの中よ。もう何十年も前のことだから保管状態はどうだか……」
「今取り出そう。ノナ様に渡すべきだと思っている」
「そうね。あした、そのことを話しましょう」
パールは、手話を使いながらガスと会話している。……それにしても、「あれ」「渡す」って何のことかしら……。お父様とガスに関係性があるというけど、一体……。
ここで盗み聞きしているのも気分が悪い。力を入れてドアを開け、ふたりの前に姿を現した。
(上がりました)
「ノナ様!」
ガスは驚いた声を上げ、会話がぴたりと止まる。ふたりは見つめ合い、パールが優しく微笑んだ。
「今日はお疲れでしょう。ゆっくりお休みください」
「手話お上手ですよ。またあしたお話しましょう」
(ありがとうございます。おやすみなさい)
精一杯の笑顔を作って。
食事が終わって1時間後、入浴の支度をした。必要なものや洋服はこの家のものを借り、バスルームを案内される。その間、家の内装を頭に入れた。ブルートン家は2階建て、ふたり暮らし、3つの部屋、キッチン、バスルーム、ダイニング、リビング。よくわからないけれど、これが一般的な家なのだろうか。案内したパールは振り向き、頭を下げた。
「何か手伝いは必要でしょうか?」
(結構です)
「……ごゆっくりお過ごしくださいませ」
全身を洗った後、湯船に浸かる。足を伸ばし、髪を浴槽の縁にのせた。バスタブであの川を渡ろうとしたことが嘘のように、問題なく入浴できる。
「……」
不思議な人たちに、不思議な夕食。屋敷を出たときに描いた計画は白紙になった。かといって新しいものが出てくることもなく、頭の中が空っぽだ。今更生きようと思えないし、未来がない。
お湯をすくうと、僅かな隙間からぽろぽろこぼれた。
そうだ。世界は絶望だ。
バスルームを出て、頭の天辺から爪先まで拭いた。目の前にメイク用の鏡があって、向かい側の大きな姿見に背中が写る。薄紫色の痣や火傷の跡。痛みはないけど、時折痒くなる。感情や人とのつながりは永遠でないとしても、この傷は永遠に残るのだろう。
パールのナイトウェアに着替える。嗅いだことのない、固有のにおいを羽織るイメージ。私が着ていた洋服は、目覚めた部屋のサイドテーブルに置いてあった。
着替え完了。スリッパを履き、バスルームを出て廊下を歩いた。この後やるべきことは特にないから、あの部屋に行って就寝しよう。その前に挨拶しようと思い、リビングへ向かった。ドアノブに手を乗せると、室内から夫妻の声が聞こえる。
「そういえば、あれはどこにしまった?」
「サイドテーブルの中よ。もう何十年も前のことだから保管状態はどうだか……」
「今取り出そう。ノナ様に渡すべきだと思っている」
「そうね。あした、そのことを話しましょう」
パールは、手話を使いながらガスと会話している。……それにしても、「あれ」「渡す」って何のことかしら……。お父様とガスに関係性があるというけど、一体……。
ここで盗み聞きしているのも気分が悪い。力を入れてドアを開け、ふたりの前に姿を現した。
(上がりました)
「ノナ様!」
ガスは驚いた声を上げ、会話がぴたりと止まる。ふたりは見つめ合い、パールが優しく微笑んだ。
「今日はお疲れでしょう。ゆっくりお休みください」
「手話お上手ですよ。またあしたお話しましょう」
(ありがとうございます。おやすみなさい)
精一杯の笑顔を作って。
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