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エピソード
Ep.5 あなたが気になるなら
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Ep.5 あなたが気になるなら
「それなら、無茶をして怪我しないでくださいね」
「無茶なんかしてないし」
「あなたが傷つき怪我をすると私は心配します。だから喧嘩なんてしないでください」
「……うう。気をつける」
アトラスの言葉を聞いて、馬鹿正直に頷いた私。何が何だかよくわからないけど、別に逆らう理由もなかったから。さっきまで血気盛んだったことが嘘のよう。ほんの少し会話をしただけで、気持ちが落ち着いた。
彼は椅子に座り、エンジンをかける。私はその後ろに乗り、彼の肩を掴んだ。
「掴まっていてくださいね」
「うん」
バイクが走り出すと不安定になり、仕方なくしがみついた。風が気持ちいい。道路にほとんど車がいないから走りやすいだろう。またさっきの(事故)ハグを思い出してしまい、慌てて新しい話題を振る。
「なんで敬語なの? 私が年下なのに使う必要ある?」
彼はふふ、と鼻で笑った。
「これは私のクセです。気になりますか?」
「うん。私別に偉くないし」
生まれてこの方敬語なんてろくに使ったことないけど。堅苦しいし、暑苦しい。年上とか、偉大な人に使うものだと思っていたから。彼は私より年上だし、私はだれかに誇れるほど立派な人間じゃない。
「私が使いたいから使っているだけですよ」
「変なの」
そう言われるとわかっていたけど。やはり、おかしくて笑ってしまう。私が笑うと彼も笑うし。ますますおかしくなる。
「それに、必ずしも年上が偉いというわけではありません。表現方法のひとつと言えます」
何だかそういうもの聞いたことがある。敬語を使う理由として、「敬意を示すため」「距離をとるため」とあった。前者は絶対にないから、後者?
「距離をとるために使うの?」
「うーん、そういうわけではないのですよ」
曖昧にはぐらかされた。まったく、いつもこうだ。笑って誤魔化して本題から逸らそうとする。腹が立ったから、耳元で囁いてやった。
「変な人」
「はい。私は変な人です」
信号待ちだったから、振り向かれ目が合う。タイミングが悪かった。顔を元に戻して背中に押し付ける。危ない。こんなときに情けない顔を見せられない……。
「そうやって言うから変な人になっちゃうんだよ」
「うふふ」
暖かい背中……。安心して、ついすり寄ってしまう。青信号になったから、またしがみつく。走り出すと、再び話題が変わった。
「距離をとるために使っているわけじゃないですよ」
「じゃあなんで?」
「落ち着くからですよ。でもあなたが気になるのならやめます」
何度聞いても、アトラスは真面目に答えてくれた。子供のような、馬鹿みたいなことでも。
「やっぱいいや。何でもない」
「それなら、無茶をして怪我しないでくださいね」
「無茶なんかしてないし」
「あなたが傷つき怪我をすると私は心配します。だから喧嘩なんてしないでください」
「……うう。気をつける」
アトラスの言葉を聞いて、馬鹿正直に頷いた私。何が何だかよくわからないけど、別に逆らう理由もなかったから。さっきまで血気盛んだったことが嘘のよう。ほんの少し会話をしただけで、気持ちが落ち着いた。
彼は椅子に座り、エンジンをかける。私はその後ろに乗り、彼の肩を掴んだ。
「掴まっていてくださいね」
「うん」
バイクが走り出すと不安定になり、仕方なくしがみついた。風が気持ちいい。道路にほとんど車がいないから走りやすいだろう。またさっきの(事故)ハグを思い出してしまい、慌てて新しい話題を振る。
「なんで敬語なの? 私が年下なのに使う必要ある?」
彼はふふ、と鼻で笑った。
「これは私のクセです。気になりますか?」
「うん。私別に偉くないし」
生まれてこの方敬語なんてろくに使ったことないけど。堅苦しいし、暑苦しい。年上とか、偉大な人に使うものだと思っていたから。彼は私より年上だし、私はだれかに誇れるほど立派な人間じゃない。
「私が使いたいから使っているだけですよ」
「変なの」
そう言われるとわかっていたけど。やはり、おかしくて笑ってしまう。私が笑うと彼も笑うし。ますますおかしくなる。
「それに、必ずしも年上が偉いというわけではありません。表現方法のひとつと言えます」
何だかそういうもの聞いたことがある。敬語を使う理由として、「敬意を示すため」「距離をとるため」とあった。前者は絶対にないから、後者?
「距離をとるために使うの?」
「うーん、そういうわけではないのですよ」
曖昧にはぐらかされた。まったく、いつもこうだ。笑って誤魔化して本題から逸らそうとする。腹が立ったから、耳元で囁いてやった。
「変な人」
「はい。私は変な人です」
信号待ちだったから、振り向かれ目が合う。タイミングが悪かった。顔を元に戻して背中に押し付ける。危ない。こんなときに情けない顔を見せられない……。
「そうやって言うから変な人になっちゃうんだよ」
「うふふ」
暖かい背中……。安心して、ついすり寄ってしまう。青信号になったから、またしがみつく。走り出すと、再び話題が変わった。
「距離をとるために使っているわけじゃないですよ」
「じゃあなんで?」
「落ち着くからですよ。でもあなたが気になるのならやめます」
何度聞いても、アトラスは真面目に答えてくれた。子供のような、馬鹿みたいなことでも。
「やっぱいいや。何でもない」
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