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エピソード
Ep.4 ハグ
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Ep.4 ハグ
「……ありがとう」
「どういたしまして」
「……」
アトラスは手際がいい。さっと左腕と顔の治療を済ませた。優しく触れられると、おかしくなってしまいそうで目を逸らした。彼が見ているのか見ていないのかわからないけど、私だけ意識しているなんて癪に触る。痛くないのに歯を食いしばって、頬に空気を詰めた。意外とあっさり治療は終わる。
「では帰りましょうか」
「いい。私ひとりで帰る」
彼は救急セットとゴミをまとめ、立ち上がる。リュックに入れて、座席の下へしまう。私は急いで髪を梳かして、口の下を手で拭った。なんだか冷たい気がして。こんなところにも絆創膏を貼られたから、違和感があってくすぐったい。
「夜道は危ないですよ。送っていきますから、後ろに乗ってください」
「私はひとりで……!」
あまりにもしつこく迫ってくるから、一発殴ろうと思って足に力を入れた。だけど空回り。左足がついていかなくて、呆気なく倒れた。勢いよく地面にぶつかる! そう思っていたけど……。
「……!」
彼が手を伸ばして受け止めてくれた。胸に飛び込んでしまったみたいで、息が止まった。――近い。近すぎる。こんなに密着するなんて聞いてない! でも、嫌な感じはしなくて。
「立つのもやっとなのに、ひとりで帰るなんて危ないです。行きますよ」
私は転び、支えられ、抱きしめられている。……うん。状況を理解すると、恥ずかしくなって胸を押した。
「離してっ」
「はい離しました」
笑顔でパッと両手を離すアトラス。それにしても鼻につく言い方。もう何年と同じグループにいたから、今さら気にならないけど。そういう人だってことはよく知っている。
彼はカゴからヘルメットを取り、そのうちひとつを私に渡した。
「窮屈ですが、怪我防止のためヘルメットをかぶってください」
「言われなくてもやるよ」
髪が崩れるけど、もうボロボロだから気にするだけ時間の無駄だ。おとなしくかぶり、ストラップを留める。彼も同じ格好になった。
「よくできました」
「私は子供か!」
「失礼。からかいすぎました」
「ぷんっ」
盛大なため息をついて怒るフリ。彼はケラケラと笑って、バイクを道路まで引っ張る。夜更けということもあり、街は限りなく暗い。ライトもごくわずかだ。私は絶妙な距離を開けて着いていき、左腕をさする。多分、折れてないと思うけど……。
「お家まで送りますよ。車はいないのですぐ着くでしょう」
「うん」
「あしたまたお家に行きますよ。拾ったら病院で検査していただきます」
は? と思ったことが顔に出る。さっきのは何? と首も傾げて。
「さっき治療したからいいじゃん」
「私は医者ではないですよ。もし骨でも折れていたら大変です。詳しく診ていただきましょう」
「えー……。医者嫌い。アトラスがいい」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
「……」
アトラスは手際がいい。さっと左腕と顔の治療を済ませた。優しく触れられると、おかしくなってしまいそうで目を逸らした。彼が見ているのか見ていないのかわからないけど、私だけ意識しているなんて癪に触る。痛くないのに歯を食いしばって、頬に空気を詰めた。意外とあっさり治療は終わる。
「では帰りましょうか」
「いい。私ひとりで帰る」
彼は救急セットとゴミをまとめ、立ち上がる。リュックに入れて、座席の下へしまう。私は急いで髪を梳かして、口の下を手で拭った。なんだか冷たい気がして。こんなところにも絆創膏を貼られたから、違和感があってくすぐったい。
「夜道は危ないですよ。送っていきますから、後ろに乗ってください」
「私はひとりで……!」
あまりにもしつこく迫ってくるから、一発殴ろうと思って足に力を入れた。だけど空回り。左足がついていかなくて、呆気なく倒れた。勢いよく地面にぶつかる! そう思っていたけど……。
「……!」
彼が手を伸ばして受け止めてくれた。胸に飛び込んでしまったみたいで、息が止まった。――近い。近すぎる。こんなに密着するなんて聞いてない! でも、嫌な感じはしなくて。
「立つのもやっとなのに、ひとりで帰るなんて危ないです。行きますよ」
私は転び、支えられ、抱きしめられている。……うん。状況を理解すると、恥ずかしくなって胸を押した。
「離してっ」
「はい離しました」
笑顔でパッと両手を離すアトラス。それにしても鼻につく言い方。もう何年と同じグループにいたから、今さら気にならないけど。そういう人だってことはよく知っている。
彼はカゴからヘルメットを取り、そのうちひとつを私に渡した。
「窮屈ですが、怪我防止のためヘルメットをかぶってください」
「言われなくてもやるよ」
髪が崩れるけど、もうボロボロだから気にするだけ時間の無駄だ。おとなしくかぶり、ストラップを留める。彼も同じ格好になった。
「よくできました」
「私は子供か!」
「失礼。からかいすぎました」
「ぷんっ」
盛大なため息をついて怒るフリ。彼はケラケラと笑って、バイクを道路まで引っ張る。夜更けということもあり、街は限りなく暗い。ライトもごくわずかだ。私は絶妙な距離を開けて着いていき、左腕をさする。多分、折れてないと思うけど……。
「お家まで送りますよ。車はいないのですぐ着くでしょう」
「うん」
「あしたまたお家に行きますよ。拾ったら病院で検査していただきます」
は? と思ったことが顔に出る。さっきのは何? と首も傾げて。
「さっき治療したからいいじゃん」
「私は医者ではないですよ。もし骨でも折れていたら大変です。詳しく診ていただきましょう」
「えー……。医者嫌い。アトラスがいい」
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