ごめんね、足りなかったよね。

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エピソード

Ep.8 どうでもいい

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Ep.8 どうでもいい
 父から怒鳴られ、母から見て見ぬふりをされ、兄からは無視されてきた。悪い友人とつるみ、狭いテリトリーで暴力を振るう。授業に参加せず、試験も受けず、まともな学校生活なんて送ってこなかった。だれかに見てほしかったとか、肯定してほしかったとか、思ってない。そんな大層な人生を送ってきていないから。
 ずっと、生まれてきた意味を考えていた。何か縋るものがほしかった。そのために、人を殴って蹴ってでも探し続けた。でも、そんなことしても何の意味もないって思い知ったの。痛みとつらい記憶が残るだけ。犠牲を大きくさせただけ。結局、私という存在が最初から意味がなかった。両親を困らせ、兄の足を引っ張る役立たず。暴力することしか頭にない脳筋。
「もう疲れた……。全部どうでもいい……」

 別に、彼と出会ってから急に人生が変わったわけじゃない。そこまでうまくいくとは思っていないから。ただ、ほんの少し、兆しが見えただけなんだ。
「……ふぅ」
 いつものように、薄暗い路地裏で仲間たちと群れた。夜1時のこと。この日も、縄張りに入ってきた他校の年上たちをこてんぱんにしてやった。この上ない快感と虚無。自問自答してもなお、納得する答えは出なかった。
 ライターと煙草。仲間たちから教えてもらった楽しみ。至高/嗜好の味。おいしいかだなんてどうでもよくて、寄りかかれば十分だ。
「こんばんは。今日も元気そうですね」
「……!?」
 いつの間に、背後を取られた……!? もしかしてアトラス・ラヴェノール!? 吃驚して顔がぐちゃぐちゃになるところだった。慌てて唇を伸ばし、眉を谷の形に変える。
「何よ。しつこいわね」
 にこやかに笑うアトラス・ラヴェノール。その手に紙袋。チョコレート店のロゴがうっすら見える。
「昨日のお礼です。よければ、召し上がってください」
 やはり渡してきた。顔が引きつり、言葉に詰まる。一步後ろに下がり、紙袋を押し付ける。
「そういうの要らないから」
「一服ですか? ならお茶をどうぞ」
 再び差し出された紙袋。押しつけ合いみたいになって、なんだか嫌な感じがした。
「茶も菓子も要らない。私にはこれがあれば十分」
「そうですか」
 意外とあっさり引き下がって拍子抜けした。笑ったままだし。何なの、何がしたいの、この人……。
「はぁ……」
 その後、会うたび、色々言われて面倒くさくなった。保護者か! とツッコミたいくらい付いてきて何か言う。とりあえず煙草がだめみたい。仕方ないから、少しは控えるようにした。それにしても、彼の言うことを真に受けすぎた。
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