ごめんね、足りなかったよね。

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Ep.17 原罪

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Ep.17 原罪
 父のことが嫌いだ。同じ血を引いていることを後悔するくらい嫌い。大嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。母も兄も嫌い。父に怯えて、模範的な家族を演じて。だれも逆らおうとしないし、へこへこ頭を下げて情けない。
 特に母は、嫌われている私に気づきながらも、中途半端なことをした。私の成績や普段の生活を誇張して、父と周囲の保護者に愚痴った。ありもしないことをでっち上げられた。「自分は何も悪くない、悪いのは、父親にすら従わないあの子だ」という態度だった。私が父に殴られているときも、止めずにただ見ていた。夫を見るときは恐れを全面に出し、娘を見るときは目が死んでいた。「殴られて当然だ」、「庇うほど価値のある娘じゃない」、「無駄なこと」と愚痴っているのを聞いたことがあった。追い出されたときにもらった僅かな食べ物も、プレゼントとしてもらった、ボロボロのぬいぐるみも、邪悪に見えた。
「ユリシアのやつ、本当学ばないよな。俺なら必死で縋り付くのに。しないんだから、本当のバカだよな?」
「父さんもおっかないよ……。そのうち死ぬんじゃね?」
 ボコボコに殴られた私という悪い見本がいて、兄たちはますます優秀になった。父のスパルタ教育のせいで賢い人になると、私に関わることが無駄と判断して近づかなかった。ろくに話したこともない。
「おい」
 ずっと父は高圧的な人だった。母をこき使い、子供たちを混乱させて雁字搦めにする。名前なんてほとんど呼ばないし、いつも「お前」呼びだった。母に対しても兄に対しても。「おい」から始まり、当たり散らし、最終的には手を出す。
「シャツ曲がってるんだけど。みっともないから直せよ」
「パスタが冷めてる。とっとと温めろ」
「酒飲むから買ってこい。気分が悪いんだよ」
「埃溜まってる。掃除してる?」
「なんで起こさなかったんだよ! 今日は大事な会議があるっていうのに!」
 父は、家族を養うために働いていた。朝一番に母が起き、用意された料理を食べ、スーツに着替えて車に乗る。生活面で不満があれば母に八つ当たりする。家事をするのは母の役目だと釘を刺す。洗濯、アイロン掛け、買い物、料理、掃除、そのほか、挙げればキリがない。
 父に正義があるかって? そんな愚問をわざわざ聞く? 答えるまでもないだろう。
「ねえ、私に言ったよね? 生まれなければ良かった、さっさと殺しておくべきだって」
「……?」
 この感じ、私に暴言を吐いたことすら忘れてるな? ボケっとして反応が遅い。……というか、いつの間に父の背中は丸まっているし、毛量にゆとりが生まれ、シワやシミが増えた。思ったよりちっぽけな人だった。今まで怖気づいていたことが恥ずかしい。取るに足らない人じゃないか。
「最初から殺しておけば良かったのよ!あははははは!」
「は?」
「生まれなければ良かった? 何バカなことほざいてんの。そっくりそのままお返しするわ。私じゃなくて、あんたたちが私という人間を生み出したことが罪なのよ」
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