触れたいのに届かなくて

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4話 呼び止める声

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4話 呼び止める声
 やることもないから家に帰る。そして、早くこのフィディリスから離れたい。帰る方向が同じというのはどうやら本当のようで、同じ電車に乗って揺られた。特に話すこともなく、4駅過ぎたら降りる。……降りる駅も同じとは。そろそろ溜息が出そう。
「――で、何が原因なのか、話してみる?」
「……」
 唐突に聞かれても。
「あなたに話すことはないわ」
「そう?」
「ええ。人に言ってもどうにもならないもの」
「本当に?」
「そうよ。すべては自業自得。私のせいだから。あなたに関係ないわ」
 同じことを、言葉を変えて言っている気分。所詮こんなものね、やはりあそこで死ぬべきだった。
「まったく関係ないとは言い切れない」
「どうして?」
 駅のロータリー。迎えに来る車、帰宅する車、帰る人たちでごった返している。喧騒。電車から乗り降りする人、通り過ぎる音。指先が冷えていく。昨日まではなかった、少しだけの非日常。さっき死んでいれば、感じることのなかった気持ち悪さ。
「傍観者でいたくなかったから」
 ――偽善者?
 私にはそう聞こえた。
「またあしたね」
 家の方向は違ったみたい。東西。正反対だ。
 背を向けたフィディリス。銃やナイフ、返されてないけど。どのみち、あればまた使うから、仕方ない。
 フィディリス・シュヴァリエ。変な人。ただの他人なのに、偽善者ぶっているのか狂人を演じているのか、わからないけどどうでもいい。
 どうせ、それより前に私の人生が終わる。

17時――アルベール家
「ただいま」
 帰ってきてしまった。ここはアルベール家。駅から徒歩15分のところにある、閑静な住宅街のうちの一軒家だ。ドラッグストア、スーパー、ベーカリー、スイーツショップが徒歩5分以内にある。エレメンタリースクールやライブラリー、ポリスオフィス、クリニックなどが半径1キロメートルほどにあり、暮らしやすいところだ。
 衣食住も十分なのに、欲張る私がいる。育てられたくせに、なにひとつ欠けていないくせに、わがままを言う。身体だけ大きくなった駄々っ子。それが私という人間だ。
 兄や両親は20時か21時まで仕事で、弟もそれに合わせてエレメンタリースクールの内外でクラブ活動をしている。夕食は各々食べることになっているけど、授業が終わったらすぐに帰る私は、極力食べない生活を送っている。家に帰っても特にやることはない。ワークは面倒だし、予復習しても理解できないし、何も考えずにぼうっとするだけ。
 いっそ家から出てしまおうか。ここにいると息が詰まるけど、死ぬわけにはいかない。もう少し離れたところであるべきだ。怖くなければ、あそこで死ねるチャンスはあった。すべては私の行動が遅いせい。絶好のタイミングを逃してしまった。今からハイスクールに戻るべきだろうか。いや、もう施錠されて入ることは難しそうだ。
「……あれ?」
 ポケットに入れていたスマホが鳴っている。振動しているから、電話だ。勤務中の両親や兄、スマホを持っていない弟からではない。なら詐欺電話? そう思って無視しようとしたら、間違えて通話ボタンを押してしまった。
『これ、ルミナスの電話?』
『え?』
 私を知っている? というか、この声……さっき別れたフィディリスのように聞こえる……。
『あなたはだれですか?』
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