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20話 ここがユートピアなら
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20話 ここがユートピアなら
私と入れ違いになるように、フィディリスはアルベール家を訪ねた。当然、だれもいない。異変を察知したフィディリスは腰の銃に触れ、息を呑んだ。一歩遅かった。電話しても一向に出ない。メッセージも無視。意味が分かったフィディリスは頷き、鍵をかけていたはずの玄関から、堂々と中に入っていった。……鍵を、開けられたから。
夢の回想
思えば、考えてみたことがなかった。私が理想とする幸せって、どんなものなのか。
何をしたら、私は私らしくいられるのか。
正解はない。だから探すしかない。それにしては見つからない。
私の好きなことは、好きなものは、何か。
……。
……。
……。
やはり、何度考えてもわからなかった。
ここがユートピアなのかな? 何も見えないし、何も出来ないし、動けないし、聞こえないけど。
在りし日の思い出を、振り返ってみる。家族はいつも楽しそうに笑っていた。仲良く話をして、遊んで、食べて、眠って。私が来た途端、笑顔が消えて。話しかけたらそれぞれの部屋に戻ってしまって。
私がいる意味って、なんだろう?
……意味なんて、ないのかも。求めちゃいけないのかも。ないものを探しても、見つからないから。
首の傷、すっかりかさぶたになって、ざらついている。
あのとき死ぬのに失敗して、よかったかも。ここがユートピアなら、私は、もう死んでいるはずだから。自業自得。これでいい。今わからなくても、いずれ、幸せを見つけられるかもしれない。私が死ねば、家族はハッピーだから。
そう、これで……いいんだ。
10月11日17時20分――アルベール家
一方、フィディリスはそこの住人であるかのように家に侵入し、バッグに入っていた武器を取り出して確認した。銃やナイフがぎっしり詰まっている。どうやら、弾切れは心配なさそうだけど、それよりも自然に家にいることが信じられない。フィディリスの立ち居振る舞いは謎で不自然ながら、家のセキュリティが意味を成していないのだから。
確認が終わってバッグに詰めると、目を瞑って考え事を始めた。そして、この家に人がいないことを確認して玄関まで歩く。すると、どこからか電話の音が鳴って足が止まった。どこの電話だろう? 靴を脱いでその音をたどる。……あった。インターホンの近くにある、家の電話だった。
『はい』
『……男?』
『何か用でも?』
互いにクエスチョンマークを浮かべ話が進まない。フィディリスは溜め息をつき、少しだけ頭をひねった。
『あなたのことはよく知っています。FORTH。今すぐ計画を中止してください』
受話器の奥で、高らかな笑い声が聞こえる。
『何をいまさら! お前に何ができる? これだから、社会経験のない人たちは面白味がないのよ』
『最後の警告です。計画を中止してください』
勝ち誇る相手にひるまず、フィディリスは語気を強める。
『やめる? 嫌だね。お前に止められても実行する!』
ガチャリ、と一方的に電話を切られた。フィディリスは舌打ちをして、靴を履いて玄関から出た。ドアが閉じると、勝手に鍵がかかった。
私と入れ違いになるように、フィディリスはアルベール家を訪ねた。当然、だれもいない。異変を察知したフィディリスは腰の銃に触れ、息を呑んだ。一歩遅かった。電話しても一向に出ない。メッセージも無視。意味が分かったフィディリスは頷き、鍵をかけていたはずの玄関から、堂々と中に入っていった。……鍵を、開けられたから。
夢の回想
思えば、考えてみたことがなかった。私が理想とする幸せって、どんなものなのか。
何をしたら、私は私らしくいられるのか。
正解はない。だから探すしかない。それにしては見つからない。
私の好きなことは、好きなものは、何か。
……。
……。
……。
やはり、何度考えてもわからなかった。
ここがユートピアなのかな? 何も見えないし、何も出来ないし、動けないし、聞こえないけど。
在りし日の思い出を、振り返ってみる。家族はいつも楽しそうに笑っていた。仲良く話をして、遊んで、食べて、眠って。私が来た途端、笑顔が消えて。話しかけたらそれぞれの部屋に戻ってしまって。
私がいる意味って、なんだろう?
……意味なんて、ないのかも。求めちゃいけないのかも。ないものを探しても、見つからないから。
首の傷、すっかりかさぶたになって、ざらついている。
あのとき死ぬのに失敗して、よかったかも。ここがユートピアなら、私は、もう死んでいるはずだから。自業自得。これでいい。今わからなくても、いずれ、幸せを見つけられるかもしれない。私が死ねば、家族はハッピーだから。
そう、これで……いいんだ。
10月11日17時20分――アルベール家
一方、フィディリスはそこの住人であるかのように家に侵入し、バッグに入っていた武器を取り出して確認した。銃やナイフがぎっしり詰まっている。どうやら、弾切れは心配なさそうだけど、それよりも自然に家にいることが信じられない。フィディリスの立ち居振る舞いは謎で不自然ながら、家のセキュリティが意味を成していないのだから。
確認が終わってバッグに詰めると、目を瞑って考え事を始めた。そして、この家に人がいないことを確認して玄関まで歩く。すると、どこからか電話の音が鳴って足が止まった。どこの電話だろう? 靴を脱いでその音をたどる。……あった。インターホンの近くにある、家の電話だった。
『はい』
『……男?』
『何か用でも?』
互いにクエスチョンマークを浮かべ話が進まない。フィディリスは溜め息をつき、少しだけ頭をひねった。
『あなたのことはよく知っています。FORTH。今すぐ計画を中止してください』
受話器の奥で、高らかな笑い声が聞こえる。
『何をいまさら! お前に何ができる? これだから、社会経験のない人たちは面白味がないのよ』
『最後の警告です。計画を中止してください』
勝ち誇る相手にひるまず、フィディリスは語気を強める。
『やめる? 嫌だね。お前に止められても実行する!』
ガチャリ、と一方的に電話を切られた。フィディリスは舌打ちをして、靴を履いて玄関から出た。ドアが閉じると、勝手に鍵がかかった。
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