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21話 なんで助けたの
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21話 なんで助けたの
フィディリスがこちらに来る前、家族の探していた弟は、暗闇で眠っていた。その周囲に散らばる実験道具。ビーカーやフラスコの中に、おぞましい紫色の液体が入っている。頭上の豆電球がチカチカと光って火花が散った。乱雑に開かれた本が、何十冊もそのままにされている。時折聞こえるぶくぶくは実験途中の液体、臭いもそれ。真っ暗で何も見えない。本に足跡がついている。泥がついた、まだ新しいもの。頼るべきものがないのに、ここを使っていた人の痕跡が、わずかに残っていた。
10月11日17時30分――廃屋
私を閉じ込めた悪人面の女性は、甲高く笑った。無情な悪魔の笑みだった。先程の部屋と違うところといえば、明かりや実験道具、本はなく、足の踏み場がまだあるところだ。とはいえ、鉄の塊……使われなくなった機械のパーツが、なぜか床に転がっているけど。何の意味があるのか、さっぱりわからない。
「さあーて、どうやって抉ろうか」
「……」
そうだ、私、この女性に後ろから襲われて気絶していた。足元に置かれた鉄の塊を頭に叩きつけられて。それで幸せになれるならなんでもよかった。
「まずは縛ろう」
女性は私を持ち上げて、硬い台の上にのせる。そして、ロープを用意する。まずは腹を縛り、足を固定し、手を伸ばして台の縁にくくりつけた。これで大体のことはできなくなる。私の頬を触り、髪を撫で、確かに首筋を見た。興味深そうにじっくりと観察しようとすると……。
どこからともなく、弾丸が飛んできた。女性は察知して避け、すぐに腰のポシェットから銃を取り出す。……そして、敵は女性の後ろからやってきた! 倉庫のボロボロの壁を蹴破り、参戦!
「な!」
背後を取られすぐに気づいたけど、間に合わず弾が腕に当たった。女性も黙っていることはなく、反撃する。それを躱して、撃って……銃を使った戦いは、両者の実力が拮抗していた。決着がつかず、持久力に自信のない女性は、突如、私を盾にしてこう叫んだ。
「こいつがどうなってもいいのかな!?」
「……!」
「あははははは!」
敵……は、息を呑んで判断に遅れた。女性を撃つか私を助けるか。その一瞬のスキをついて、女性は私の腕を刺した……刺した? 撃つのではなく? 現実で痛みを感じた私は目が覚め、動けないことと、バトルに気づいた。……左手にナイフが刺さって、そこから血が出ている。力が……入らない。
敵……じゃなくて、フィディリス。なんでここにいるのだろう。どうしてここがわかったのだろう。でもそんなことどうでもいい。ずいぶん息が荒いし、汗が垂れている。床に転がった弾丸。撃ち合いをしていたことは、よくわかった。フィディリスに怪我はないみたい……。
一瞬だけ、目が合った。そう感じるより前に、私の意識がなくなったけど。
睨み合っていたフィディリスと女性。女性はなぜか急に咳込み、頭を下げた。笑いすぎて喉が詰まったのだろう。そのスキにフィディリスがそこを撃ち抜く。嫌な音がした。血が飛び散って無残な赤色になる。フィディリスは銃をベルトにかけて、少しずつ私に近づく。私は大げさに呼吸しながら、やっと声を絞り出せた。
「なんで……私を助けたの」
フィディリスがこちらに来る前、家族の探していた弟は、暗闇で眠っていた。その周囲に散らばる実験道具。ビーカーやフラスコの中に、おぞましい紫色の液体が入っている。頭上の豆電球がチカチカと光って火花が散った。乱雑に開かれた本が、何十冊もそのままにされている。時折聞こえるぶくぶくは実験途中の液体、臭いもそれ。真っ暗で何も見えない。本に足跡がついている。泥がついた、まだ新しいもの。頼るべきものがないのに、ここを使っていた人の痕跡が、わずかに残っていた。
10月11日17時30分――廃屋
私を閉じ込めた悪人面の女性は、甲高く笑った。無情な悪魔の笑みだった。先程の部屋と違うところといえば、明かりや実験道具、本はなく、足の踏み場がまだあるところだ。とはいえ、鉄の塊……使われなくなった機械のパーツが、なぜか床に転がっているけど。何の意味があるのか、さっぱりわからない。
「さあーて、どうやって抉ろうか」
「……」
そうだ、私、この女性に後ろから襲われて気絶していた。足元に置かれた鉄の塊を頭に叩きつけられて。それで幸せになれるならなんでもよかった。
「まずは縛ろう」
女性は私を持ち上げて、硬い台の上にのせる。そして、ロープを用意する。まずは腹を縛り、足を固定し、手を伸ばして台の縁にくくりつけた。これで大体のことはできなくなる。私の頬を触り、髪を撫で、確かに首筋を見た。興味深そうにじっくりと観察しようとすると……。
どこからともなく、弾丸が飛んできた。女性は察知して避け、すぐに腰のポシェットから銃を取り出す。……そして、敵は女性の後ろからやってきた! 倉庫のボロボロの壁を蹴破り、参戦!
「な!」
背後を取られすぐに気づいたけど、間に合わず弾が腕に当たった。女性も黙っていることはなく、反撃する。それを躱して、撃って……銃を使った戦いは、両者の実力が拮抗していた。決着がつかず、持久力に自信のない女性は、突如、私を盾にしてこう叫んだ。
「こいつがどうなってもいいのかな!?」
「……!」
「あははははは!」
敵……は、息を呑んで判断に遅れた。女性を撃つか私を助けるか。その一瞬のスキをついて、女性は私の腕を刺した……刺した? 撃つのではなく? 現実で痛みを感じた私は目が覚め、動けないことと、バトルに気づいた。……左手にナイフが刺さって、そこから血が出ている。力が……入らない。
敵……じゃなくて、フィディリス。なんでここにいるのだろう。どうしてここがわかったのだろう。でもそんなことどうでもいい。ずいぶん息が荒いし、汗が垂れている。床に転がった弾丸。撃ち合いをしていたことは、よくわかった。フィディリスに怪我はないみたい……。
一瞬だけ、目が合った。そう感じるより前に、私の意識がなくなったけど。
睨み合っていたフィディリスと女性。女性はなぜか急に咳込み、頭を下げた。笑いすぎて喉が詰まったのだろう。そのスキにフィディリスがそこを撃ち抜く。嫌な音がした。血が飛び散って無残な赤色になる。フィディリスは銃をベルトにかけて、少しずつ私に近づく。私は大げさに呼吸しながら、やっと声を絞り出せた。
「なんで……私を助けたの」
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