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22話 好きだからだよ
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22話 好きだからだよ
「なんでって……好きだからだよ」
「……?」
目を疑いたくなる。好き? だれがだれを?
いや、何を? と言うべきか?
「ルミナスが好きだから、助けた。死んでほしくないから、生きてほしいって思うからだよ」
フィディリスは言葉を噛み砕いてくれる。彼なりの優しさなのだろう。人を殺したとは思えないほどの美しい顔。並べられた美辞麗句。お世辞と言おうか。私はそれにふさわしい人なのか? ……ノーだろう。とてもそうには思えない。
そんなセリフ似合わないし、吐いているフィディリスもらしくない。恥ずかしげもなく、よく言えるものだ。
「……もういいよ。殺して」
動けないのなら、今、殺して終わりにして――。
フィディリスは首を横に振って、左腕からナイフを抜く。
「痛っ」
腕が真っ赤になる。ナイフを抜くときは見ていられたのに、大量出血は見ていられない。
「それはだめ。病院に行こう?」
「……いい」
顔を動かしてフィディリスを見ないようにする。
「痛いから。たとえルミナスが痛くなくても、身体を大事にしてほしいよ」
「……あなたのものじゃないわ」
フィディリスは順にロープを解く。足、手、お腹……。動けるようになって、自分の手をまじまじと見つめた。
「うん。そうだね。一緒に行こう」
「……?」
うんとは、言ってないけど。
10月11日18時20分
病院に行くと、フィディリスは私のことを友人と呼び、少しだけ笑っていた。私は手の治療とそのほか腕を見せる羽目になり、恥ずかしい思いでいっぱいだった。絆創膏やらパッドやらを貼られ、薬を出され、ひとまず帰ることに。家族からのメッセージは……変わらず。まだ探しているのかも。いまだに状況は変わっていない。
日が沈んで周囲は真っ暗だ。街灯の明かりを頼りにして歩く。ほとんどの人は、家に帰ってこれから夕食を食べるのだろう。民家の明かりと匂いがそれを証明する。私たちは、全く違うことをしている。
「ご家族は今、どこにいるの?」
「……」
そう聞かれたとき、なんて答えようか迷った。フィディリスは対外的に私を友人と見て、ふたりきりのときは好きだと言ったけど、私はなんとも思っていない。むしろありがた迷惑なのである。何度も死期を逃している理由も、この人のせいだと押し付けているし。心配そうな顔で見つめられても、特に何も話すことはない。
「……知らない」
このまま帰ってこなければいい――。
そう思ってしまった。冗談ではなく。
間違いなくひとりで生きていけないけど、家族のいる生活より、いない生活がマシ。だから、このまま、弟が永遠に見つからなければいいと、一瞬でも思ってしまう自分がいた。
「何か手がかりがあれば教えてほしい。……犯人とあの倉庫の特徴……。何かあると思う」
「……」
言語化できないし、したくない。私は醜い。言霊にしたくなくて、フィディリスの手を握った。
「一緒に行こう。片っ端から、心当たりのあるところを探してみようよ」
そう、フィディリスは優しく言葉をかける。
(でもそうか。どうせ弟が戻ってもそうでなくとも、私の価値は変わらないのだから)
「何もしないと、きっと弟は死ぬよ」
「そうね」
私にできることは何もないけど……。このままで終わりたくないと、思う。なんだか、気持ちが落ち着かないから。うまく、言葉にできないけれど。
「銃使える? ナイフにする?」
「……ナイフで」
「じゃあ行こうか」
フィディリスはポケットからナイフを出して渡す。袋を開けると、まぶしい光を放つナイフが出てくる。それが私にふさわしいかどうかはわからなくても、現状を打破するために、使わないと。
家族に変わってほしいと祈るのではなく、私自身が変わるために。
「なんでって……好きだからだよ」
「……?」
目を疑いたくなる。好き? だれがだれを?
いや、何を? と言うべきか?
「ルミナスが好きだから、助けた。死んでほしくないから、生きてほしいって思うからだよ」
フィディリスは言葉を噛み砕いてくれる。彼なりの優しさなのだろう。人を殺したとは思えないほどの美しい顔。並べられた美辞麗句。お世辞と言おうか。私はそれにふさわしい人なのか? ……ノーだろう。とてもそうには思えない。
そんなセリフ似合わないし、吐いているフィディリスもらしくない。恥ずかしげもなく、よく言えるものだ。
「……もういいよ。殺して」
動けないのなら、今、殺して終わりにして――。
フィディリスは首を横に振って、左腕からナイフを抜く。
「痛っ」
腕が真っ赤になる。ナイフを抜くときは見ていられたのに、大量出血は見ていられない。
「それはだめ。病院に行こう?」
「……いい」
顔を動かしてフィディリスを見ないようにする。
「痛いから。たとえルミナスが痛くなくても、身体を大事にしてほしいよ」
「……あなたのものじゃないわ」
フィディリスは順にロープを解く。足、手、お腹……。動けるようになって、自分の手をまじまじと見つめた。
「うん。そうだね。一緒に行こう」
「……?」
うんとは、言ってないけど。
10月11日18時20分
病院に行くと、フィディリスは私のことを友人と呼び、少しだけ笑っていた。私は手の治療とそのほか腕を見せる羽目になり、恥ずかしい思いでいっぱいだった。絆創膏やらパッドやらを貼られ、薬を出され、ひとまず帰ることに。家族からのメッセージは……変わらず。まだ探しているのかも。いまだに状況は変わっていない。
日が沈んで周囲は真っ暗だ。街灯の明かりを頼りにして歩く。ほとんどの人は、家に帰ってこれから夕食を食べるのだろう。民家の明かりと匂いがそれを証明する。私たちは、全く違うことをしている。
「ご家族は今、どこにいるの?」
「……」
そう聞かれたとき、なんて答えようか迷った。フィディリスは対外的に私を友人と見て、ふたりきりのときは好きだと言ったけど、私はなんとも思っていない。むしろありがた迷惑なのである。何度も死期を逃している理由も、この人のせいだと押し付けているし。心配そうな顔で見つめられても、特に何も話すことはない。
「……知らない」
このまま帰ってこなければいい――。
そう思ってしまった。冗談ではなく。
間違いなくひとりで生きていけないけど、家族のいる生活より、いない生活がマシ。だから、このまま、弟が永遠に見つからなければいいと、一瞬でも思ってしまう自分がいた。
「何か手がかりがあれば教えてほしい。……犯人とあの倉庫の特徴……。何かあると思う」
「……」
言語化できないし、したくない。私は醜い。言霊にしたくなくて、フィディリスの手を握った。
「一緒に行こう。片っ端から、心当たりのあるところを探してみようよ」
そう、フィディリスは優しく言葉をかける。
(でもそうか。どうせ弟が戻ってもそうでなくとも、私の価値は変わらないのだから)
「何もしないと、きっと弟は死ぬよ」
「そうね」
私にできることは何もないけど……。このままで終わりたくないと、思う。なんだか、気持ちが落ち着かないから。うまく、言葉にできないけれど。
「銃使える? ナイフにする?」
「……ナイフで」
「じゃあ行こうか」
フィディリスはポケットからナイフを出して渡す。袋を開けると、まぶしい光を放つナイフが出てくる。それが私にふさわしいかどうかはわからなくても、現状を打破するために、使わないと。
家族に変わってほしいと祈るのではなく、私自身が変わるために。
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