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23話 戻ってきた日常
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23話 戻ってきた日常
その後、フィディリスの協力もあって、監禁されていた弟を見つけることができた。両親に連絡するとき怖かったけど、4時間くらい待ったら来てくれた。大袈裟に騒いで、弟は病院に行ったという。幸い大事には至らず、治療や入院も必要ないと聞いた。3人とも弟に付き添ったから、ひとりきり……ではなくて、フィディリスがそばにいた。
「……ありがとう。弟を探してくれて」
「見つかってよかったね」
その言葉に少し棘を感じたけど、目を伏せて黙った。日が沈んでから何時間経ったのだろう。もうとっくに月が顔を出している。星空だ。月も少しずつ欠けて形を変える。
「送っていくよ」
「……ありがとう」
歩いて30分、ようやく自宅に到着。ここにいてもだれも来ないけど、ひとりではなかったから、少しだけ心が落ち着いた。
フィディリスは歩いて帰っていくみたい。ここからだいぶ時間がかかりそう。
私は……勉強しないと。
10月12日6時30分――アルベール家
次の日の朝、家族はいつも通り談笑していた。弟がいる、普段の日常。相変わらず私は浮いて影のない存在で、腕の傷についての言及もなかった。
特に、両親は弟の無事を喜んでいた。何度もハグをし、キスをし、涙を流した。弟は潰されて息苦しそうにしながら、ふたりに感謝を伝えていた。よくできた息子だ。絵に描いたような理想的な家族。それが弟と両親の関係だった。私は感情を整理できないまま、朝食のスパゲッティをフォークで刺してしまった。
「サニー! よかったねえ。何もなくて」
「心配したんだよ。無事で何よりだ」
「ちょっと痛いよぉ……」
「今日は無理してESに行かなくていいよ。休みなさい」
「そうね。ゆっくり休んでからにしましょう」
「お友達に心配かけてるし、元気だから行くよ!」
……兄は、無言で新聞片手にコーヒーを飲んでいる。
「まあ! なんて素晴らしい子なのかしら」
「良き友を持ったな」
……なんか、違う。
私がほしかったものではない。求めていたものではない。それなのに、こんなに待遇が違うの? 私は、あんなふうに抱きしめられたことがあった? 心配された? 無事を泣いて喜んでくれた?
スパゲッティとコーヒー、とにかく美味しくなかった。
今日のニュースは、だいたいどこも同じだった。
『幼児誘拐事件解決か』ーと。
どうやら、あの廃屋や倉庫に警察が侵入したらしく、容疑者の死亡が確認された。元科学者で過去に実績もあった女性……アルキュミア・グラナトゥムは書類送検された。罪状は、幼児誘拐、殺人未遂、違法薬物……など。片っ端から幼児を誘拐して、実験の被験者にしていたらしい。行方不明届の出された子供や、すでに死んでいる子供、意識のない子供など50人ほどいたという。巷では、異常な癖や、新たな薬の開発のためだと噂された。そして、彼女の使った部屋には、4のカードがばらまかれていた。
……頭を撃ち抜いたようだと報道されていたけど、フィディリスが偽装工作して自殺に見せかけたらしい。フィディリスと私が容疑者として名前が挙がることはなかった。不幸中の幸いというか。
こうして、デスゲームの初戦は、相手の死亡という形で幕を閉じた。
その後、フィディリスの協力もあって、監禁されていた弟を見つけることができた。両親に連絡するとき怖かったけど、4時間くらい待ったら来てくれた。大袈裟に騒いで、弟は病院に行ったという。幸い大事には至らず、治療や入院も必要ないと聞いた。3人とも弟に付き添ったから、ひとりきり……ではなくて、フィディリスがそばにいた。
「……ありがとう。弟を探してくれて」
「見つかってよかったね」
その言葉に少し棘を感じたけど、目を伏せて黙った。日が沈んでから何時間経ったのだろう。もうとっくに月が顔を出している。星空だ。月も少しずつ欠けて形を変える。
「送っていくよ」
「……ありがとう」
歩いて30分、ようやく自宅に到着。ここにいてもだれも来ないけど、ひとりではなかったから、少しだけ心が落ち着いた。
フィディリスは歩いて帰っていくみたい。ここからだいぶ時間がかかりそう。
私は……勉強しないと。
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次の日の朝、家族はいつも通り談笑していた。弟がいる、普段の日常。相変わらず私は浮いて影のない存在で、腕の傷についての言及もなかった。
特に、両親は弟の無事を喜んでいた。何度もハグをし、キスをし、涙を流した。弟は潰されて息苦しそうにしながら、ふたりに感謝を伝えていた。よくできた息子だ。絵に描いたような理想的な家族。それが弟と両親の関係だった。私は感情を整理できないまま、朝食のスパゲッティをフォークで刺してしまった。
「サニー! よかったねえ。何もなくて」
「心配したんだよ。無事で何よりだ」
「ちょっと痛いよぉ……」
「今日は無理してESに行かなくていいよ。休みなさい」
「そうね。ゆっくり休んでからにしましょう」
「お友達に心配かけてるし、元気だから行くよ!」
……兄は、無言で新聞片手にコーヒーを飲んでいる。
「まあ! なんて素晴らしい子なのかしら」
「良き友を持ったな」
……なんか、違う。
私がほしかったものではない。求めていたものではない。それなのに、こんなに待遇が違うの? 私は、あんなふうに抱きしめられたことがあった? 心配された? 無事を泣いて喜んでくれた?
スパゲッティとコーヒー、とにかく美味しくなかった。
今日のニュースは、だいたいどこも同じだった。
『幼児誘拐事件解決か』ーと。
どうやら、あの廃屋や倉庫に警察が侵入したらしく、容疑者の死亡が確認された。元科学者で過去に実績もあった女性……アルキュミア・グラナトゥムは書類送検された。罪状は、幼児誘拐、殺人未遂、違法薬物……など。片っ端から幼児を誘拐して、実験の被験者にしていたらしい。行方不明届の出された子供や、すでに死んでいる子供、意識のない子供など50人ほどいたという。巷では、異常な癖や、新たな薬の開発のためだと噂された。そして、彼女の使った部屋には、4のカードがばらまかれていた。
……頭を撃ち抜いたようだと報道されていたけど、フィディリスが偽装工作して自殺に見せかけたらしい。フィディリスと私が容疑者として名前が挙がることはなかった。不幸中の幸いというか。
こうして、デスゲームの初戦は、相手の死亡という形で幕を閉じた。
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