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25話 俺が守るからね
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25話 俺が守るからね
10月20日
試験結果が出た。
勉強したから、少しだけ点数は良かった。それでも、兄や弟には及ばなくて顔向けできない。また叱責されると溜め息をつきつつ、振り返りシートを受け取った。以下の質問に答えなければいけない。
「Q.今回の試験でどの教科を頑張りましたか?」
A.特にありません。
「Q.今回の試験の反省点は何ですか?」
A.勉強不足です。
「Q.次回の試験で何をしますか?」
A.……。
次回の試験? そんな、不確かなものにも答えなければいけないなんて、愚問。書くことは何もない。
そのほかの質問にも答えて、ボックスに入れて提出した。こうなってしまったのは、自分のせいであり、他人や不調のせいにしてはいけない。これまで授業をまともに勉強していないのに、急にやろうとしてもうまくできるわけない。それを体験できて良かったじゃないか。……そう思うことにしよう。
「……ルナ?」
「……」
「聞こえてる?」
「……」
「ルミナス?」
「え、ああ、私?」
私を呼んでいるとは思わなかった。顔を上げると、目の前の席にフィディリスが座っている。少しだけ微笑んでいるような気がした。ということは、高得点を獲得できたのかな?
「ようやく試験が終わったね。肩の力が抜けたよ」
「うん。そうだね」
「次の試験までしばらく時間あるし、のんびり過ごそうよ?」
「……ん?」
勝手にひとりで話を進めるフィディリス。背もたれに寄りかかって頬杖をついて、柔らかい空気をまとっているし、余裕そうだな。
「どういうこと?」
「デートしよ」
「……」
デート。Date.デートね。……。
「え!? やっぱり意味がわからない!」
「そのままの意味だよ。出掛けよう」
フィディリスは、朝「おはよう」と言うように、自然と口にした。デートという言葉を。私が変に意識しているだけかもしれないけど、それにしては、フィディリスの口がよく動く。
「……どうして?」
「練習したくて」
「練習?」
フィディリスは私の左手を握り、顔を耳に近づける。そして、そっとささやいた。
「狙撃練習」
「……」
顔を離して、立ち上がるフィディリス。言葉を噛み砕くのに時間がかかって、口を開けたままの私。
「少しずつ練習してすぐに戦えるようにしなきゃ。場所は遊園地ね。25日にどう?」
「えー……っと。よくわからないんだけど」
フィディリスは私の左腕に手を添えた。すっかり傷は消えてかさぶたになっていて、痛みはない。そこを撫でられ、なんだか不思議な感じ。
「痛かったね」
「……もう平気だよ」
手を引いてそっぽ向く。くすぐったいし、人前で恥ずかしいからやめてほしい。
「あいつ、殺せて良かった……。ルナを傷つけるやつは、皆敵だからね」
「……?」
フィディリスの手が首の右側に動く。そこは……深くて消えない傷跡……。
「もう傷つかないように、俺が守るからね」
「……」
守……る?
フィディリスの様子が明らかにおかしい。さっきまでの余裕はどこかに消え、危険な怪しさをまとっている。近づきたくないのに、花の甘い匂いに囚われた蝶のように、吸い付いてしまう。その匂いは毒か否か。気絶してしまうほど、気持ちいいものか。
「だから安心して。一緒にいよ……」
10月20日
試験結果が出た。
勉強したから、少しだけ点数は良かった。それでも、兄や弟には及ばなくて顔向けできない。また叱責されると溜め息をつきつつ、振り返りシートを受け取った。以下の質問に答えなければいけない。
「Q.今回の試験でどの教科を頑張りましたか?」
A.特にありません。
「Q.今回の試験の反省点は何ですか?」
A.勉強不足です。
「Q.次回の試験で何をしますか?」
A.……。
次回の試験? そんな、不確かなものにも答えなければいけないなんて、愚問。書くことは何もない。
そのほかの質問にも答えて、ボックスに入れて提出した。こうなってしまったのは、自分のせいであり、他人や不調のせいにしてはいけない。これまで授業をまともに勉強していないのに、急にやろうとしてもうまくできるわけない。それを体験できて良かったじゃないか。……そう思うことにしよう。
「……ルナ?」
「……」
「聞こえてる?」
「……」
「ルミナス?」
「え、ああ、私?」
私を呼んでいるとは思わなかった。顔を上げると、目の前の席にフィディリスが座っている。少しだけ微笑んでいるような気がした。ということは、高得点を獲得できたのかな?
「ようやく試験が終わったね。肩の力が抜けたよ」
「うん。そうだね」
「次の試験までしばらく時間あるし、のんびり過ごそうよ?」
「……ん?」
勝手にひとりで話を進めるフィディリス。背もたれに寄りかかって頬杖をついて、柔らかい空気をまとっているし、余裕そうだな。
「どういうこと?」
「デートしよ」
「……」
デート。Date.デートね。……。
「え!? やっぱり意味がわからない!」
「そのままの意味だよ。出掛けよう」
フィディリスは、朝「おはよう」と言うように、自然と口にした。デートという言葉を。私が変に意識しているだけかもしれないけど、それにしては、フィディリスの口がよく動く。
「……どうして?」
「練習したくて」
「練習?」
フィディリスは私の左手を握り、顔を耳に近づける。そして、そっとささやいた。
「狙撃練習」
「……」
顔を離して、立ち上がるフィディリス。言葉を噛み砕くのに時間がかかって、口を開けたままの私。
「少しずつ練習してすぐに戦えるようにしなきゃ。場所は遊園地ね。25日にどう?」
「えー……っと。よくわからないんだけど」
フィディリスは私の左腕に手を添えた。すっかり傷は消えてかさぶたになっていて、痛みはない。そこを撫でられ、なんだか不思議な感じ。
「痛かったね」
「……もう平気だよ」
手を引いてそっぽ向く。くすぐったいし、人前で恥ずかしいからやめてほしい。
「あいつ、殺せて良かった……。ルナを傷つけるやつは、皆敵だからね」
「……?」
フィディリスの手が首の右側に動く。そこは……深くて消えない傷跡……。
「もう傷つかないように、俺が守るからね」
「……」
守……る?
フィディリスの様子が明らかにおかしい。さっきまでの余裕はどこかに消え、危険な怪しさをまとっている。近づきたくないのに、花の甘い匂いに囚われた蝶のように、吸い付いてしまう。その匂いは毒か否か。気絶してしまうほど、気持ちいいものか。
「だから安心して。一緒にいよ……」
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