触れたいのに届かなくて

fireworks

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31話 なんでもいいよ

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31話 なんでもいいよ
 次のオブジェクトは、さっきと同じく木を渡るもの。少し違うところといえば、距離が伸びていること、木がさらに薄くなっているところだ。間隔も10cmに伸び、踏むだけで頼りないとわかる。少しだけ冷たい風が吹き、鳥肌が立つ。フィディリスは難なく優雅に歩き、チェックポイントに立つ。そして、私に向かって楽しく手を振った。風を切って前に進む姿は堂々としていた。
 安全性を考慮するため、家族、友人、一緒に来た人が手を貸すことは禁止されている。自分の実力で進むしかない、ということだ。進むか、引き返すか。中には腰がすくんで動けない人、ネットに絡まってしまった人もいて、そういう人たちにはお助けで常駐のキャストがいる。もちろんそういう人たちの手を借りるのも手だけど、初級コースは子供向けであるから、(こんなに)大きい人が助けを求めていたら情けない。本当に困ったときの救済措置に取っておこう。それに、オブジェクトは各コース10あるから、序盤の2で躓くわけにはいかない。
 なんてことを考えている間、下を見ずに木を踏んで渡りきった。下唇を噛んで、風に運ばれるようなイメージをして。チェックポイントである足場は丈夫で、真ん中の太い木をつかめれば少しだけ楽になる。ふう。今日は何回溜め息をついたことか。
 ということで次――。今度は、丸太の丸い部分を上下にした、足の踏み場が狭いオブジェクトだ。爪先がギリギリ乗るくらい。前の人が使ってグラグラ揺れているし、風もあるし、とてもじゃないけど、人間が渡るために作られていない――。
 いや、そんなことはなく、フィディリスは軽やかな足取りで丸太を踏んで、チェックポイントに着いた。ゴオオ、と強めの風が吹き、飛ばされないか不安になる。また手を振っているけど、正直、気が気でない……。

 そういう感じでアスレチックの初級コースを巡った。時間をかけてクリアし、フィディリスだけ中級コースに挑戦していた。一方、私は初級コースをもう一度巡り、高さとオブジェクトの不安定さを嘆いた。本当に叫びたい気分だった。子供の前ということもあり、必死に飲み込んで誤魔化したっけ。
 時刻は13時前。動いてばかりだからお腹が空いて、アスレチック体験時間ギリギリにそこから出た。私は少し気持ち悪いのだけど、フィディリスは風に吹かれてご機嫌だ。高所に慣れているのかな、だとしたらずいぶんと恐ろしい……。
「ランチは何食べたい?」
「……んー。何でもいいよ」
 口をついて出てしまった。
「お腹空いたらにする?」
 何か言わないと……!
 コバルトブルーに似た色の瞳が、少しだけ揺らいだ気がした。
「少しだけ食べたいかも。……あー、ポテト! ポテトがいいな!」
 よりによって脂っこいものを挙げるなんて……!
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