触れたいのに届かなくて

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33話 教えて

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33話 教えて
10月25日13時20分――遊園地
「ルナ!」
 私……を呼ぶ声。私はルナじゃなくてルミナスだけど、多分、こう言うのはフィディリスしかいない。手がどこからか伸びて、右手が引っ張られる。人混みをかき分けていくから目を閉じて、まぶしくなってきたら開ける。息を整えると、隣にフィディリスがいた。
「人が多いね。……抜けようか?」
「……ううん。フィディリスもお腹空いてるでしょ?」
「いいよそんなこと。行列に突っ込むのはやめようか」
「いいよ……」
 互いに譲り合って話が進まない。
「……流れに任せて、行こう? つかえてるから」
「うん」
 フィディリスは私の手を引いて、人混みから抜ける。フードコートは遠ざかってしまい、複雑な気持ち。でも、窒息しそうな人の群れは、遠ざかって、音やにおいは落ち着いた。
「ポテトといえば……軽食かハンバーガー屋だよね。フードコートを避けるなら……」
 フィディリスは真剣に考えてくれてる。私が我慢すればいいだけなのに、時間と手間がかかっている。居たたまれなくなって、首筋に爪を立てた。
 好きと言ってくれたけど、どう考えたって割に合わない。何より居心地が悪い。早くここから去ってしまいたい。そう言葉にできたらいいのだけど、左手を握りしめて、歯を噛むしかできなくてもどかしい。
「ルナ」
「……?」
「この先、もしかしたらルナと俺で対立することがあるかもしれない。そしたら、自分の想いを優先させてほしい」
「え?」
 何言ってるの?
「ルナの命に関わる選択なら、俺が動くけど。それ以外なら、自分のことを考えていて」
 フィディリスは左手も取り、力を入れていた指を動かす。爪痕が食い込んでしまい、かさぶたに傷がつく。知らぬ間に、こんなに力んでいたんだ。そして、傷つけていたんだ。右手の力が抜けて、だらんと下がる。
「ルナにもやりたいことや希望があるでしょう? 俺はそれを聞きたいんだ」
「私のやりたいこと?」
「そうだよ」
 あるのかな、そんなもの、私に。わからないけど、もしあるのなら、見つけてみたい……と思う。もしかしたら、今なら、自分の能力を自分で使えるのかな? 両手を離して合わせてみる。流れてくる。私の想い……。
「……難しく考えていたのかも」
「?」
「……ありがとう」
 答えは、きっと、すぐそこに。

 フードコートから離れ、アトラクションの近くの飲食店でランチを食べることになった。フィディリスは照り焼きバーガー、私はチーズフィッシュバーガーとそれぞれポテトセットを頼んだ。普段はこんなにカロリーの多いものを食べないから新鮮で、少しワクワクしている。
「いただきます」
 ぶどう味のソフトドリンクを一口。疲れに染み渡る~! ポテトもつまみ食い。油と塩のおかげで美味しすぎる! バーガーの包みを開けて、バンズとフィッシュ、チーズをぱくり。タルタルソースと相性抜群! ハイカロリーだけど、難なく完食できそう。
 フィディリスは大盛りのポテトを食べて、油と塩をお手拭きで拭く。
「美味しそうに食べるね」
「うん。テーマパークに来たっていう感じがするよ」
「……可愛いね」
 私と話すとき、フィディリスは傷つけないよう、言葉を選んでいると感じる。そんな彼の優しさがちょっぴり嬉しかった。
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