45 / 50
45話 良かった
しおりを挟む
45話 良かった
フィディリスの腕を取り、なんとか恐竜のいた部屋から抜け出せた。けれど、恐竜は私たちを敵と認識して追いかけてくる。壁を押し破り、大きな足音を立てて。あれに踏まれたらひとたまりもない。早く伝えないと! ここは危ないから……。
でも、信じてくれる? 恐竜が生き返った! なんてデタラメ言って、信じてくれなかったら? そしたら……。
「ルナ?」
「……あ」
「大丈夫。俺が信じるから」
「……うん」
フィディリスの手を握っていたら、少しだけ安心した気がする。
恐竜は動くものを狙っているかもしれない。だとしたら、ターゲットを切り替えないと。でもどうやって? 恐竜なんか見たら腰を抜かす人もいるし、本当に危害を与えてしまうかも……。
話すのも面倒で、心の中でフィディリスと会話した。
(どうすればいい!? このままだと、皆死んじゃうよ!)
(あれはどうにもならない。まずはあの学芸員を始末しよう)
(その間にあいつが人を殺しても!?)
(ああ)
……見捨てた。
いや……100人を超える人たちを守れるわけがない。妥当な判断だ。自分が、大切な人を助けるためなら、ほかは……。
(わかった)
広い廊下に出て、右側へと進む。ドアを押し倒して、別の展示場で息を潜める。ドクドクと心臓の音が聞こえて、破裂してしまいそうだった。
「まずい」
とにかく破壊音がひどい。耳鳴りのようだ。恐竜の通った廊下や展示場は大きな穴が空き、その損害は計り知れない。雄叫び、破壊する音、悲鳴。ああ、こうしている間にも、恐竜は息を吹き返して暴れている。私にできることは、ここでじっとしていることなの?
「今は生き残ることを考えて」
「……」
「あいつを殺して、一緒にここから逃げよう」
「……」
うなずきたい。フィディリスも不安になっている。私が変に話を折り曲げず、頷けば。
「うん」
前に、進まないと。
だけど、現実は甘くなかった。ふたりが学芸員を見失ったせいで、ほかの過去の展示品も目覚めたのだ。あの恐竜に比べれば小さいものの、数は暴力になる。1体や2体で収まらず、次々と増えている。悲惨。キャリアデーはもう意味を成さなくなり、のんびりと鑑賞していた人、たたずんでいた人は、逃げ惑う人へと変わっていく。もうだれか死んだかもしれない。そう思えるほど、被害は拡大していった。
私たちは恐竜とは反対方向に走り、ようやく学芸員の姿を捉えた。フィディリスが柱の裏に隠れ、私は援護射撃のため対角にある柱の陰に潜む。恐竜と人間では、圧倒的に後者が弱い。フィディリスは息を殺し、特大の一撃を学芸員に与えた。――けど、それは頭や首に当たることなく、腕を撃ち抜いた。もう一度撃とうと次の弾を準備したとき、確かに女性が微笑んだ。恐竜の弱点は見つからない。だから女性を狙うと決めたのに――。本当に、現実はうまくいかないものだ。女性の背後に、私たちより3倍大きな恐竜がいた。ちょうど壁で見えなかったから、フィディリスも気づくのに遅れた。その恐竜は雄叫びを上げて高速で走り、長く重い足を床に叩きつけた。その結果――床が割れて真っ二つになってしまう。弱った大理石は歪み、私の立っていた床が崩れ落ちていく。雪崩のように他の展示品も上から落ちてきて、上で恐竜が暴れているのか天井も落ちて、私は押し潰されてしまった。フィディリスは少し遠くにいたから、たまたま助かったみたい。……それなら、良かった。私だけが落ちたのなら……。良かっ……た……。
フィディリスの腕を取り、なんとか恐竜のいた部屋から抜け出せた。けれど、恐竜は私たちを敵と認識して追いかけてくる。壁を押し破り、大きな足音を立てて。あれに踏まれたらひとたまりもない。早く伝えないと! ここは危ないから……。
でも、信じてくれる? 恐竜が生き返った! なんてデタラメ言って、信じてくれなかったら? そしたら……。
「ルナ?」
「……あ」
「大丈夫。俺が信じるから」
「……うん」
フィディリスの手を握っていたら、少しだけ安心した気がする。
恐竜は動くものを狙っているかもしれない。だとしたら、ターゲットを切り替えないと。でもどうやって? 恐竜なんか見たら腰を抜かす人もいるし、本当に危害を与えてしまうかも……。
話すのも面倒で、心の中でフィディリスと会話した。
(どうすればいい!? このままだと、皆死んじゃうよ!)
(あれはどうにもならない。まずはあの学芸員を始末しよう)
(その間にあいつが人を殺しても!?)
(ああ)
……見捨てた。
いや……100人を超える人たちを守れるわけがない。妥当な判断だ。自分が、大切な人を助けるためなら、ほかは……。
(わかった)
広い廊下に出て、右側へと進む。ドアを押し倒して、別の展示場で息を潜める。ドクドクと心臓の音が聞こえて、破裂してしまいそうだった。
「まずい」
とにかく破壊音がひどい。耳鳴りのようだ。恐竜の通った廊下や展示場は大きな穴が空き、その損害は計り知れない。雄叫び、破壊する音、悲鳴。ああ、こうしている間にも、恐竜は息を吹き返して暴れている。私にできることは、ここでじっとしていることなの?
「今は生き残ることを考えて」
「……」
「あいつを殺して、一緒にここから逃げよう」
「……」
うなずきたい。フィディリスも不安になっている。私が変に話を折り曲げず、頷けば。
「うん」
前に、進まないと。
だけど、現実は甘くなかった。ふたりが学芸員を見失ったせいで、ほかの過去の展示品も目覚めたのだ。あの恐竜に比べれば小さいものの、数は暴力になる。1体や2体で収まらず、次々と増えている。悲惨。キャリアデーはもう意味を成さなくなり、のんびりと鑑賞していた人、たたずんでいた人は、逃げ惑う人へと変わっていく。もうだれか死んだかもしれない。そう思えるほど、被害は拡大していった。
私たちは恐竜とは反対方向に走り、ようやく学芸員の姿を捉えた。フィディリスが柱の裏に隠れ、私は援護射撃のため対角にある柱の陰に潜む。恐竜と人間では、圧倒的に後者が弱い。フィディリスは息を殺し、特大の一撃を学芸員に与えた。――けど、それは頭や首に当たることなく、腕を撃ち抜いた。もう一度撃とうと次の弾を準備したとき、確かに女性が微笑んだ。恐竜の弱点は見つからない。だから女性を狙うと決めたのに――。本当に、現実はうまくいかないものだ。女性の背後に、私たちより3倍大きな恐竜がいた。ちょうど壁で見えなかったから、フィディリスも気づくのに遅れた。その恐竜は雄叫びを上げて高速で走り、長く重い足を床に叩きつけた。その結果――床が割れて真っ二つになってしまう。弱った大理石は歪み、私の立っていた床が崩れ落ちていく。雪崩のように他の展示品も上から落ちてきて、上で恐竜が暴れているのか天井も落ちて、私は押し潰されてしまった。フィディリスは少し遠くにいたから、たまたま助かったみたい。……それなら、良かった。私だけが落ちたのなら……。良かっ……た……。
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!
弥生 真由
恋愛
何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった!
せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!
……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです!
※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる