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47話 改変してでも
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47話 改変してでも
私は、天井やら壁やら展示品やらに押しつぶされていたけど、かろうじて生きていた。暴れている恐竜もさすがに小さくなれなくて、死んだ者と見なされている。そのうち騒ぎが収まってきて、静寂が訪れる。時折、ぱらぱらと粉が落ちてきたり、何かが軋むような音がした。ただひとつ確かなことは、このまま押しつぶされていれば、いずれ死ぬ。気絶した私はそれすら気づけないけど、そんな人生も悪くないかもしれない。自分の知らないところで息を引き取る。最も苦しまずに死ねるというか、自分を失うというか。そんな……そんな、気がする。
静寂が破られたとき、フィディリスはまだ私の行方を聞いていた。だれかが瓦礫をかき分けてここに来たのだ。……あの学芸員だ。ここまで追ってきたんだ。もう恐竜のような破壊的なものはないし、すべて骨に変わってしまった。不完全な状態で、もう一度復元することは叶わず、諦めて、直接対決を選んだ。当の私は眠りにつき、ほとんど動かない。
「あんたが……あんたさえいなければ!」
女性は、私の身体を覆っていた瓦礫を引っ剥がし、適当な場所に避け、死人の形相で笑う。完全に私と瓦礫が分離すると、軽々と持ち上げて殴り始めた。目立つように、頬、目、口の周りを中心に。面白くないことに、私は何のリアクションもしない。ただ殴られているだけ。女性は暴力を振るえて歓喜するけど、反撃しない悔しさで乱暴に私を投げ捨てた。
「……そうだ」
そうして思いついたのが……。
フィディリスは下の階を重点的に探すことにした。あの最初の恐竜の展示は4階だったから、1階から3階にかけて、いや、もしかしたらそれよりも下にいるかもしれない。移動された可能性も大いにある。計算して、単純な高さだけで考えても見つけられなかった。はあっと溜息をつき、弾を補充する。ここまで随分と下手に乱射したから、目や肩が疲れた。自分がどこにいるのか考えながら、柱の陰に隠れて休息を取る。
「!」
だれかが、床に落ちていたガラスの破片を踏んだ。フィディリスはすぐに気づき、銃を構える。
「そう焦らないでくれよ」
「……お前はだれだ」
出てきたのは、ひとりの青年。年は同じくらい。溶けるような金の髪は短く、ライムグリーン色の瞳が印象的な男性。彼は傷や汚れひとつなく、フィディリスと目を合わせて微笑む。フィディリスは警戒心を強め、いつでも引き金を引くために指を置いた。
「『彼女』の行方、知っているから教えてあげる」
「……」
「そんな冷たい顔しないで。条件は僕の質問に答えること」
男性はくるりと1回転して、自慢げに人差し指を立てる。
「君にとってルミナス・アルベールは何?」
「大切な彼女」
その解答を見越した男性は、つまらなさそうに溜め息をつく。
「へえ。そんなに好きなんだ。彼女はそう思ってないみたいだけどね?」
「ああ。だが、時間が経てば変わる」
迷いなくフィディリスはうなずく。男性は少しだけ口角を上げ、含みを持たせて嘲笑った。
「そう。彼女を改変してでも、そばに置くんだね」
「……」
「まあいいよ。案内してあげる」
『改変してでも』。
その言葉が、深く、フィディリスの心に刺さる。その真意がわかるのは、ここにいる男性ふたりだけだった。
私は、天井やら壁やら展示品やらに押しつぶされていたけど、かろうじて生きていた。暴れている恐竜もさすがに小さくなれなくて、死んだ者と見なされている。そのうち騒ぎが収まってきて、静寂が訪れる。時折、ぱらぱらと粉が落ちてきたり、何かが軋むような音がした。ただひとつ確かなことは、このまま押しつぶされていれば、いずれ死ぬ。気絶した私はそれすら気づけないけど、そんな人生も悪くないかもしれない。自分の知らないところで息を引き取る。最も苦しまずに死ねるというか、自分を失うというか。そんな……そんな、気がする。
静寂が破られたとき、フィディリスはまだ私の行方を聞いていた。だれかが瓦礫をかき分けてここに来たのだ。……あの学芸員だ。ここまで追ってきたんだ。もう恐竜のような破壊的なものはないし、すべて骨に変わってしまった。不完全な状態で、もう一度復元することは叶わず、諦めて、直接対決を選んだ。当の私は眠りにつき、ほとんど動かない。
「あんたが……あんたさえいなければ!」
女性は、私の身体を覆っていた瓦礫を引っ剥がし、適当な場所に避け、死人の形相で笑う。完全に私と瓦礫が分離すると、軽々と持ち上げて殴り始めた。目立つように、頬、目、口の周りを中心に。面白くないことに、私は何のリアクションもしない。ただ殴られているだけ。女性は暴力を振るえて歓喜するけど、反撃しない悔しさで乱暴に私を投げ捨てた。
「……そうだ」
そうして思いついたのが……。
フィディリスは下の階を重点的に探すことにした。あの最初の恐竜の展示は4階だったから、1階から3階にかけて、いや、もしかしたらそれよりも下にいるかもしれない。移動された可能性も大いにある。計算して、単純な高さだけで考えても見つけられなかった。はあっと溜息をつき、弾を補充する。ここまで随分と下手に乱射したから、目や肩が疲れた。自分がどこにいるのか考えながら、柱の陰に隠れて休息を取る。
「!」
だれかが、床に落ちていたガラスの破片を踏んだ。フィディリスはすぐに気づき、銃を構える。
「そう焦らないでくれよ」
「……お前はだれだ」
出てきたのは、ひとりの青年。年は同じくらい。溶けるような金の髪は短く、ライムグリーン色の瞳が印象的な男性。彼は傷や汚れひとつなく、フィディリスと目を合わせて微笑む。フィディリスは警戒心を強め、いつでも引き金を引くために指を置いた。
「『彼女』の行方、知っているから教えてあげる」
「……」
「そんな冷たい顔しないで。条件は僕の質問に答えること」
男性はくるりと1回転して、自慢げに人差し指を立てる。
「君にとってルミナス・アルベールは何?」
「大切な彼女」
その解答を見越した男性は、つまらなさそうに溜め息をつく。
「へえ。そんなに好きなんだ。彼女はそう思ってないみたいだけどね?」
「ああ。だが、時間が経てば変わる」
迷いなくフィディリスはうなずく。男性は少しだけ口角を上げ、含みを持たせて嘲笑った。
「そう。彼女を改変してでも、そばに置くんだね」
「……」
「まあいいよ。案内してあげる」
『改変してでも』。
その言葉が、深く、フィディリスの心に刺さる。その真意がわかるのは、ここにいる男性ふたりだけだった。
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