触れたいのに届かなくて

fireworks

文字の大きさ
48 / 50

48話 死ぬから。逃げて。

しおりを挟む
48話 死ぬから。逃げて。
 もう終わりだ。
 私が目覚めたときは、本当に最悪なタイミングだった。死んだ……と思っていたのに、まだ生きていたのだから。しかも、本物の死が目の前に迫っている。私は、瓦礫の上に叩きつけられて身体がまともに動かせず、口の中に銃口を向けられている。もうおしまいだ。この人はデスゲームの参加者だった。だから、他人を蹴落とすために私を殺す。そういえば、前も同じことをやった。結局人生は繰り返しなのだ。ゲーム。まさに、この言葉が相応しいふさわしい
 悲しくない。嬉しくない。なのに涙があふれるのはなぜか。目を閉じてごまかす。意味があることを祈って。
「!」
 撃たれる数秒前に、フィディリスが私の目の前に現れる。頭を狙ったショットはかわされる。さすがの女性も驚いて、ターゲットを変える。動けない私はどのみち足手まといだし、動けるフィディリスを撃つのが理想的だろう。合理的だ。彼女の目標は……万全を……。
「こいつは私の能力を奪ったのよ」
 無抵抗なのに、再び死の淵に晒される。どうやら、女性はフィディリスにまったく興味がないよう。憎悪の対象である私が死ぬまで、死相や恐怖の笑みは落ち着きそうにもなかった。
「私だけで十分」
 女性の能力……それは、ものを再生すること。それ自体に、加虐性はまったくない。悪用した結果、今回のように関係のない一般人を巻き込んだ争いになってしまった。その原因が私らしい。無理もない。女性が再生するなら、私は表現する。これらの行為は「触れる」という点において、ほとんど同じ効果を発揮するから。それがたまらなく悔しくて悲しくて憎いのだろう。
「私がお前らを殺して、すべてを終わらせるの!」
 あははは、と甲高く笑って異常性を誤魔化す。肌をひっかいたせいで赤く、頬は痩せこけ、スーツは破れてボロボロ。不安定に揺れる睫毛や、落ち着きのない足の動き。歪んだ視界。正しく距離を測ることも出来ない。
 人質を取られている。フィディリスは武器を捨てて降伏の合図をした。両手を上げ、女性を睨みつける。女性は、フィディリス、私、と交互に銃を動かす。一度腕を撃ち抜いたからか、血があふれ、正常な状態を維持できない。喀血しながら、嗚咽まじりに叫んだ。
「どのみちここを壊したかった! 偽りの展示だらけ! 給料未払いだし! 偽の噂のせいで評判は最悪! なんで学芸員になったの!? 意味わかんない!」
 悲痛な胸の内。人間ならだれもが持つ感情。ここにいる女性は、だれよりも人間らしい。歪んで曲がって折れた信念。そりゃグレる。自然なことだ。
「……フィディリス」
 弱々しい声でそう呼ぶ。聞こえているかわからないけど、目を開けて最期の景色を目に焼き付けた。もう……いい。私よりも生きるべき人はいる。そうわかっているなら、命を差し出そう。
「私……死ぬから。逃げて」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。 ※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!

弥生 真由
恋愛
 何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった! せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!  ……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです! ※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

処理中です...