5 / 11
いざ会いに行きます
しおりを挟むさて、逆ハーレムルートでは平和を乱した罪だとか国家反逆罪とかヒロインをいじめた罪とかなんだかよくわからない罪まで重なって火炙りになるオレだが、ゼロセブンルートでどう死ぬかと言えば確か『ゼロセブンの気を引こうとゼロセブンの研究成果を横取りしてその尋問中に死亡』だ。全年齢ゲームなので色々とぼかして表現されていたが、ようは『尋問という名の拷問によって死亡』そう考えていいだろう。…ろくな死に方しないな、オレ。
そして今のオレはゼロセブンの研究成果を横取りする気もなければそもそもの動機である『ゼロセブンの気を引く』気がさっぱりない。いや、ゲームの強制力でもしかすると出会った瞬間ゼロセブンに惚れてしまう可能性もあるわけだが、そうなったら頼りになる相棒に一発殴ってもらって解決しよう。
「オレがゼロセブンに惚れそうになってたら一発痛いの頼むぞ」
「畏まりました」
これで良し。
なんの躊躇いもなく頷くオディットに少々傷つくが、信頼の証ということにしておこう。
そもそもこのクソゲ…もとい『ルージュ・ヴェール~五つの王国と絆の乙女~』だが、逆ハーレム推奨ゲームの割には細かく個別ルートが存在する。ということはつまり、絆の乙女が逆ハーレムを築かなくても世界の平和にはなんの問題もないと考えていいだろう。…多分。ゲームの最後だとヒロインと選ばれたイケメンは世界の覇権を握っていたが、まさかそのあと暴力で世界を統一するわけではあるまい。…ないよね?
「なぁ、お前って"真実の愛"ルートのそのあとの知識までダウンロードされてるのか?」
「…その後ですか?"ひろいん"と世界の覇権を…なんで世界の覇権を握ってるんだ…?あ、いえ、失礼しました。…コホン、世界の覇権を握ったあとは、人の国のために精力的に活動した…という知識だけですね」
顔を顰めつつそう教えてくれたオディット。
オディットも世界の覇権を握るところに疑問を持ってくれて嬉しく思うぞ。おかしいよな、当代の母があの様子なのに。
オディットの話を聞いてオレはよし、と頷く。これでとりあえずゲームクリア後の憂いはない。
と、なると。オレとしてはヒロインちゃんが誰と次代の絆の乙女になってくれても何の問題はないわけだが…、どのルートでもオレが死んでいることがやっぱり一番の問題なのか。
それにもしゲームの強制力が働いたとして、これから出会うであろうイケメンたちが人形のようにヒロインの都合の良い玩具になり、消費されるなんて黙って見ていられない気がする。
オレはオレで死なずに好きな人を見つけ(女になっていることはとりあえず置いておく)、イケメンたちにも好きな人を見つけて貰って、ヒロインちゃんにも…まぁ、好きに生きてもらいたいものだ。
ゲームのシナリオだろうが、世界や国に決められたことだろうが、他人の敷いたレールをただ歩くなんてオレは嫌だね。まぁ、これから会うイケメンくんたちがそれを良し、とするならオレは何も言わないが。
他人の生き様に文句つけられるほどオレは偉くも正しくもないのだ。
ゲーム世界の理不尽や不条理に出会わない限りは、オレはオレとオディットを一番大事にして生きていく。
そう決めたのだ。
まぁ、まずはゼロセブンだ。
というわけで城の応接間にやってきたオレたちだったが…。
「…こないな。ゼロセブンくん」
「来ませんね」
思考に耽って暫く経ったが、一向にゼロセブンが現れる様子がない。
オディットも手元の懐中時計を開いて、首を傾げている。
「というか、懐中時計なんてあるんだ」
「げーむの世界ですので」
「そんなこと言うなよ…」
しれっと自虐まじりに笑うオディットに思わず呆れた目をしてしまう。
それにしてもこの世界に懐中時計があることをおかしいと思えるとは…。こいつ、ゲームのシナリオ以外に現代日本の知識とか世界知識とかもそれなりにダウンロードされてそうだな。どういう仕組みなんだか、いったい。
オレがぽけっとそんなことを考えてると、慌てた様子のメイドが一人オディットに近寄り何事かを耳打ちしている。
「どうしたんだ?」
「それがゼロセブン様なのですが、試験的に城に設置された"水洗といれ"なるものの様子をみていると」
「水洗トイレ!?」
オレは思わずガタッと音を立てて立ち上がる。それにオディットくんの眉が寄ったが、そんなもの気にしていられない。だって聞いたか?水洗トイレだ!
この世界、ちょこちょこ文明レベルのおかしいものがあるが、何故かトイレだけは近世ヨーロッパの世界観にマッチしていた。その結果が壺。トイレが壺なのだ。陶器の無駄に凝った装飾のやつ。そこにこだわりはいらなかったなーなんて何度思ったことか。
オレが男じゃなきゃ泣いてたぜ、と思っていたところなのだ。
喜びを隠せないオレを怪訝な目で見ていたオディットだが、新たな現代知識がダウンロードされたのか、次第に顔色が嬉しそうに変化していく。…本当にそれどういう仕組みなの。
「なるほど、水洗トイレですか。これは実に衛生的で、便利そうだ」
「だろだろ!?下水道工事なんていつの間にやってたんだか全然気付かなかったよ!なぁ、オレたちも見に行こうぜ!」
「そうですね、ここで待っていてもいつゼロセブン様がお見えになるかわかりませんし…」
オディットもそれならば仕方ない、と言った様子で頷いた。
ちょっとそわそわしてるのがわかるぞ。優しいオレはわざわざ指摘しないがな。
いざ、水洗トイレに会いに!…違った、ゼロセブン様をお迎えに行こうではないか!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる