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季節外れの転校生.1
しおりを挟む「頼みたいのは、これとこれと……あと、これもだな。はい、よろしく!」
「はい、承りました」
(あーーー胃が痛い。これ放課後だけで終わる?終わらねえよ。かといって明日に持ち越すのは絶対やだしなぁ。やるしかねえか……。風紀委員会ブラックすぎない?)
目の前で積まれていく書類の山に、どんどん遠い目になっていくが、微笑みだけは崩さない。
これ超大事。優等生のイメージが崩れると、俺の学園での立場、ひいては俺自身の安全をおびやかすことになるのだ。
笑顔は世界を救うし俺の貞操も守る。
「いやー、助かる助かる。風紀は真面目だから、仕事は早いし色々やってくれるし」
いや、教師たちが勝手に押し付けてくるから、やらざるを得ないんですけど?とは、とても言えなかった。
口にするしない以前に、続く教師の言葉で頭が真っ白になってしまったのだ。
「あー、そういえば。もうすぐ一年に転校生が来るってな」
「…………転校生、ですか」
声が上ずってしまっていないか、ドキッとした。
よりによって人の多い昼休みの職員室の中で、優等生の仮面が剥がれてしまっていないか、と。
「対応するのはほとんど生徒会だし、二年の佐倉にはあんまり関係ないかもしれないが……。一応、心に留めておいてくれ」
「はい、わかりました」
にこり、といつも通り微笑む。
その裏では、顔が引きつらないように必死で怒りを押さえ込んでいたが。
(転校生に対応するのは生徒会でも、転校生によって起きる校内の『揉め事』に対応するのは、俺ら風紀委員会なんですけど……?)
「……ちなみに、いつ来られるんですか?」
「明日だ」
「…………なるほど」
明日。明日というのはつまり一日後ということでいいのだろうか。
そうだとしたら、そろそろ頭のどこかの血管がぶち切れてしまうかもしれない。
(もっと早く言えよ!!!! 一日で対策しきれるわけねえだろ馬鹿か!?)
心の中での叫びくらい、口が悪くなっても許してほしい。
ずっと『優等生』でいるのは結構疲れるのだ。たまには毒を吐かないとすぐにストレス過多で死んでしまう。
「……っと、そろそろ休憩終わるな。授業に行かないと……。じゃあ佐倉、その書類よろしくな」
「はい、今日中には終わらせますね」
慌ただしく去っていく教師の背中を眺めながら、ため息をついた。
突然の『転校生』発言で一瞬忘れていたが、そもそも今日はこの書類の山を片付けなければならないのだ。
束になって積み上げられている書類の山を持ち上げて、その重さにまた、ため息をついてしまいそうになる。
(……って、ダメだダメだ。こんな周りに人がいる所で余裕崩すな、俺)
すんでの所でため息を呑み込んで、優雅な笑みを顔にはりつける。
そして俺は、転校生への不安とか、書類の重さとか、そういったものを全く悟らせないように、涼しげな顔で職員室を退出した。
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