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季節外れの転校生.2
しおりを挟む職員室を出て教師たちの目がなくなっても、今度は再び生徒達から注目が集まり、心は休まらない。
「佐倉様、お手伝いしましょうか?」
「僕、荷物持ちますよ!」
むしろ、書類の山を運んでいるせいでめちゃくちゃ話しかけられるし、さっきより悪化してる可能性すらある。
「いえ、問題ありませんから。皆様のお手をわずらわせるわけにはいきません」
本当はめちゃくちゃ重いけど。
手伝ってほしい気持ちはやまやまなんだけど。
生徒に弱みを見せたり、頼ったりはできないし、したくない。
「さすが佐倉様、華奢でいらっしゃるのに、力もあってかっこいい!」
「僕らのような下々の者のことも思いやってくれるなんて……!」
(よしよし、いい感じで『完璧超人・佐倉伊織』のイメージが広がってる!)
俺は筋肉がつきにくい体質で、護身術代わりに合気道を習ったりしたが、ムキムキにはならなかった。
別にムキムキマッチョには憧れていないが、弱いと思われると力の強い奴に襲われるかもしれないので、こうして『僕は力も強いですよ~』というアピールを忘れない。
こういう小さな努力が俺の貞操を守るんだ。
(まあ、もちろんイメージ作りも大切だけど……どっちにしろ、あんまり生徒とは関わらない方がいいんだよな)
頭の痛い話を思い出して、憂鬱な気分になる。
ホモの巣窟であるこの学園で起こる揉め事は、大体男を巡ってのキャットファイトだ。しかもオス猫vsオス猫。控えめに言って地獄。
風紀委員はその揉め事を処理しなければならないので、特に自分の恋愛関係には注意を払っている。
というかそもそも、不純交友は同性だったとしても風紀を乱しているのでアウトだから。風紀委員が風紀乱してどうすんだって話になるから。
(俺は自分からは絶対恋愛感情なんか抱かないけど、俺を巡って男が争うなんてことになったら目も当てられないし……気をつけよ)
にわかには信じ難いが、実は俺、結構モテてるらしい。
外部入学だから目立ってしまっているんだろうか……。
それとも、上流階級に慣れすぎて、俺みたいなジャンクフードが欲しくなるのだろうか。お坊ちゃんの思考回路はやはり謎だ。
(今年に入ってからキャットファイトの案件が増えてるから、なんか対策考えないとなー。はっ!そういや転校生入ってくるのか!うえぇ、それ絶対もっとめんどくさいことになるじゃん……)
この学園は外部生というだけでも珍しいので、ましてや転校生なんてとんでもない注目を浴びるだろう。
(てか、五月に転校ってタイミングおかしくね?なんか、だいぶ季節外れの転校生なん、だ……な…………)
『季節外れの転校生』
その言葉が脳内に浮かんだ瞬間、思わず足を止めてしまった。
人通りの少ないところでよかった。
呆然と立ち尽くす俺の頭に、ある記憶がフラッシュバックする。
『────伊織の入る学園って、完全に王道学園じゃん!BLの!!』
嬉しそうに弾む声。
若い女性のそれは、俺の姉である詩織のものだ。
彼女はお嬢様学校出身とは思えないほど自由人で、弟をオモチャにして遊ぶのが大好きで、────そして、『腐女子』というやつなのだ。
『王道学園っていったら、主人公は季節外れの転校生でしょー!で、学園に波乱を巻き起こして、色んな男とあれやこれやエッチなことを……!!』
ちょっと待て。
状況を整理しよう。
つまり?
鳳凰学園は『王道学園』で?
『季節外れの転校生』が?
『波乱を巻き起こして』?
『エッチなことを』…………!?
(…………終わった)
俺の胃にはそろそろ穴が開くかもしれない。
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