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個性的すぎる生徒会
しおりを挟む「伊織が食堂にいるの、珍しくないか?」
「そうですね。いつもは遅い時間に来ているので」
「どうせ飯のことも忘れて仕事してるんだろ?風紀はワーカホリックばっかりだな」
失礼な。ワーカホリックは奏さんだけだ。
「会長ったら、風紀の方々が頑張ってくれているおかげで、私達の仕事が滞りなく進んでいるのですよ。佐倉さん達に感謝しなければ。……いつもありがとうございます」
とても綺麗な所作で頭を下げるのは、生徒会副会長の柏木千尋先輩だ。
一つに結い上げた黒髪を揺らして、睫毛に縁どられた瞳を静かに伏せる、その姿は美しすぎて性別の壁を超えている。
というか、俺はこの人のことを最初、男とはとても信じられなかった。
だって髪は長くてサラッサラだし、顔はモデル並みに小さいし、目鼻立ちもその辺の女の子より可愛いのだ。
まさに大和美人、といった感じの人で、学園では『白百合の君』と呼ばれているらしい。
ここの生徒が付けるあだ名(二つ名?)でこんなに共感できるとは思わなかった。この人はたしかに白百合だ。
「いえいえ、僕の方こそ至らないことばかりで……生徒会の方には本当にお世話になっています」
「その通りだ。俺に感謝しろ!」
いや、お前じゃねえよ。
「そんな、先輩なんですから、いくらでも頼ってくれていいんですよ?」
女神だ。
外見だけじゃなく中身も女神。
いや、男に女神はおかしいけど。
柏木先輩は生徒会の中でも仕事が早くてテキパキしているし、年下の俺にも色々と親身になって教えてくれるので、とても尊敬している先輩だ。
あまりにも完璧すぎて未だに緊張してしまうので、話すのはちょっと遠慮したいのだが。
俺は、女神は遠くから眺めているだけでいいと思います。
「てか、佐倉クンって伊織って名前だったんだね、知らなかったわ!」
アハハ、とうるさい声で笑っているのは生徒会会計の速水蒼生。
俺と同学年なのに今までフルネーム知らなかったのかよ。
……まあ、頭弱そうだしな。
「僕らは二年ともクラスも違いますしね。仕方ありませんよ」
「ごめんねー、俺ヒトの名前覚えるの苦手でさぁ!今まで『仲良く』した子達の名前も覚えてないし────」
隣に座っている速水が一度言葉を切って、俺の耳元に顔を寄せる。
「今日寝る子の名前も、覚えてない」
知るか。
そう言ってしまいそうになるのを、強靭な精神力で何とか耐えた。
速水は学園の中でも群を抜いてモテる。
いや、ファンの数で言ったら天城先輩や奏さんがぶっちぎるんだろうけど、速水にはワンナイトを望む生徒が殺到する。
なぜかというと、速水は自分のことを好きだろうが好きじゃなかろうが、頼めば寝てくれるからだ。
誰とでもヤる節操なしでも、顔が良いだけで寝てほしいと思うものなのだろうか。
「じゃ、俺は用事あるんでそろそろ失礼しまーす」
「お前、今日もかよ?ほどほどにしとかないと、いつか刺されるぞ」
「会長だっていつも遊んでるじゃないっすかー」
「俺はちゃんとギリギリを見極めてやってるんだよ。お前みたいに毎日誰彼構わずヤってるわけじゃねえ」
いや、そもそも学校は勉強するところなんですけど。
ヤることばっかり考えてる時点で、どっちもどっちなんですけど。
「俺んとこの親衛隊は、会長んとこより平和っすよ?みんな平等に寝てあげてるし!」
そんな輝くような笑顔で言うことじゃないけどな。ほんと最低。
親衛隊というのは、ファンが集まって作る有志の団体みたいなものだ。
『役職持ち』の親衛隊は本人も把握しきれてないほど多くの生徒が入っているので、ちょっとしたことで争いが起きてしまう。
速水のように自分のファンにも手を出すタイプの人は、それが原因でキャットファイトに発展したりするので、風紀としては切実にやめてほしい。
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