風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実

文字の大きさ
15 / 29

理想と現実

しおりを挟む



「ちょっと!ここ食堂ですよ!離れてください!」

「はいはい、わかったよ。相変わらずガード固いなー、伊織は」

「先輩が軽すぎるんですよ!」


変な雰囲気に持ち込まれそうになったのを、慌てて回避する。
この俺様会長に好き勝手させてたら、気づいたらベットの上──なんてことも有り得るからな。

先輩があの甘ったるい空気を引っ込めてくれて、ようやく俺も一息つける。
しかし、そんな俺を休ませる気などさらさらないらしい先輩は、追い打ちをかけるように爆弾発言をぶっ込んできた。


「なあ伊織ー、お前生徒会に入らねえか?委員会とかけ持ちでいいからさ」

「……何言ってるんですか。僕は『風紀』委員ですよ?」


突拍子もないことを言い始めた先輩に、驚き呆れてしまう。
表向き、生徒会と風紀委員会は代々対立関係というか、ライバルのように思われているのだ。
それを二つかけ持ちするなど、裏切りだのスパイだのと厄介やっかいな疑惑をかけられかねない。
お互いに絶大な支持を得ているからこそ、激しい争いが起こることは簡単に想像出来る。


「……俺は、まさにその生徒会vs風紀っていう構図自体をぶっ壊したいんだよ」


ぽつり、と呟く先輩の横顔は珍しく真剣そのもので、先輩が本気であることがうかがえた。


生徒会と風紀の統一化。
考えたことがないわけではない。
今の学園は生徒会と風紀が別組織として存在していて、しかも力が拮抗している。
そこの二つが繋がっていないせいで、伝達が遅れたり食い違ったりすることもしばしば。
重要事項の決定とかも両方を通さないといけないから、二度手間になってて結構めんどくさい。

風紀副委員長になって早1ヶ月、仕事の多さに日々なげいていた俺も、『生徒会と風紀が連携れんけいしてくれたらもっと楽なのに!!』などと考えたのは一度や二度ではない。

でも、やっぱり俺は自分の身が一番大事なのだ。


「その考えが理解できないわけではありませんが、それとこれとは別問題です。
……少なくとも僕は、生徒会と風紀の『橋渡し』にはなれませんよ」


鳳凰学園が始まって以来ずっと続く、この歴史的な因縁いんねんを解く者がいるとすれば、それは俺ではない。
なんたって俺は常に自分の安全が第一、危ない橋は渡らない主義だ。

きっと、俺では役不足だろう。


「お前は優秀だし、やらせたら上手くやると思うんだけどなー。生徒会と風紀が統一されたら、風紀の仕事も多少は減るぞ?これこそwin-winだろ」

「嫌ですよ。たとえ仕事が半分になっても、かけ持ちするなら忙しさは今と変わらない……どころか悪化する可能性すらありますよね?生徒の不満を抑えきれる自信もありませんし……。
どう考えても僕の一人負けでしょう」


(仕事が楽になるとはいえ、その『楽』が学校全体で起こるであろう大混乱と引き換えにってなると、さすがに割に合わないよなぁ)


基本的に安定志向しこうの俺は、できれば平穏に学園生活を送りたいと思っている。
……まあ、現状、平穏とは程遠いところにいるんだけども。それは俺自身も『なんで?』と首を傾げている。ほんとになんで?


反対に、天城先輩は超がつくほどの自由人で、周りの意見なんて全く気にしない。
『安定』とか『平穏』とかいう言葉はつまんねえとばかりに色々と騒ぎを起こしている人だ。

ただ、好き勝手やってはいるが、何も考えずに暴れ回っているのではなく、その後の展開を全てわかった上で動いているのがあの人のすごいところだ。
そのせいか、あれだけ騒ぎを起こしまくっているのに、一度も大きな事件に発展したことはない。

そこまで頭が回るのなら、初めから何もしないで欲しいんですけどね!!!


「ダメかー。お前ほんっとにガード固いな……まあ、まだ五月だから焦る必要はないか。今日のところは許してやるよ」


『今日のところは』って、この勧誘かんゆうこれからも続くんですか……?
勘弁かんべんして……。




しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

処理中です...