風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実

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頼られてこその先輩です

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「はぁ……今日は災難でしたね。巻き込んでしまってすみません、雪見くん……雪見くん?」


俺の隣を歩く雪見は、うつむいていてどこか元気がなさそうだった。
どこか体調でも悪くなってしまったのかと心配になったが、それを聞くより先に雪見が口を開いた。


「さっきは、すみません。……勝手なことを言って」

「え?」

「勝手に先輩の気持ちを決めつけて、転校生に怒ってしまって……僕にはなんの権利もないのに」


自分の行動を後悔しているのか、落ち込んでしまっている雪見に、どう言葉をかけようかと思案する。

たしかに決めつけだったのかもしれないけど、実際俺は転校生と友達になんてなりたくなかったし、立場上強く言えないから雪見がぶった切ってくれて結果的には助かったんだけどな。


「たしかに、少し熱くなりすぎてはいたかもしれませんが……僕自身は、助かったと思っていますよ。
今回は大丈夫だったんですから気にせずに、次から気をつければいいんじゃないですか?」

「……本当ですか?実は転校生と友達になりたかった、とか……」

「そんなことは絶対にありませんので安心してください」

「……でも、あの子、色々な人に気に入られてますし……。
先輩も、好きになっちゃったんじゃないですか……?」

「いや、絶対にないです。
……というか、むしろなんでそんなに人気なのか疑問でしかありません。彼はなぜ気に入られているのでしょう?」


小鳥遊は本人の性格がこの学園の気質と合わないのもあるが、ここまで目のかたきにされているのは、ほとんどが嫉妬によるものだろう。
彼が生徒会の方々から好かれているのは間違いなく事実だ。
しかし、なぜ好かれているのかは全くもって謎である。


「あの子、天真てんしん爛漫らんまんっていうか……素直じゃないですか。あと、天然たらしって言われてますし」

「いやいやいや、ちょっと待ってください。天真てんしん爛漫らんまんとか素直とかは百歩ゆずってわからなくもないですけど、天然たらしは絶対に違うでしょう。
あんなのにたらされる人がいるんですか?どちらかと言えば人をイラつかせるタイプだと思いますけど」

「なんかこう、役職持ちの方々とかって、みんなから遠巻きにされてるから、あんな感じでぐいぐい来られるのが嬉しいんじゃないですか?」

「ええぇ……?」


ぐいぐい来るっていうか、もはやタックルするぐらいの勢いで距離詰めてくるけどね、あいつ。
あんなのがいいのか、上流階級の方々……。いつも振り回してるから、たまには振り回されたい、とかいう願望があるのかな?ドMじゃん……。


「……まあ、そういう方々もいらっしゃるのかもしれませんね。僕には一生かかっても理解できないでしょうけど」


俺がそう断言すると、雪見は明らかにホッとしたような顔を見せた。
……もしかして、俺のことを転校生に盗られるのが心配だったとか?
いや、さすがに自意識過剰すぎるか。

だとしたら、なんだろう?
俺が転校生にうつつを抜かして、雪見とえんを切ることを恐れていた、とか?
今はお互いに友好的な関係を築けているが、それが崩れてしまえば雪見はまた、大勢の男から迫られる日々に逆戻りだ。
しかも、ファンの数はあの頃の比じゃないので、余計に大変だろう。


(うーん。俺は雪見が友人でいてくれる限り、雪見を守るつもりではあるけど……やっぱ、味方が俺一人じゃ不安かな?まあ、たしかに俺ってあんまり強そうじゃないしな……。
あ、他に先輩を紹介してあげたらいいのか!)


「雪見くん、空いてる日を教えてくれませんか?とりあえずは、そうですね……黒柳くんを紹介します!」

「ちょ、ちょっと、先輩?」

「他にも僕の持てるだけの人脈で、頼りになりそうな人を紹介しますから!雪見くんは心配せずに、大船に乗った気持ちでいてください!」

「また何か天然を発揮してませんか!?もー……好きにしてくださっていいですけど……。
どうせ会うなら二人が良かったなー……」

「え、今なにか言いましたか?すみません、よく聞こえなくて……」

「何も言ってませんよ?」


何か聞こえたような気がしていたけど、雪見のかわいらしい笑顔で誤魔化されてしまった。




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