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なかなか話が通じません
しおりを挟む「転校してきたばっかなのに、みんなとあんまり仲良くなれなくて、ちょっと落ち込んでたけど……」
小鳥遊が急にもじもじと恥ずかしそうにそんなことを言うものだから、俺は思わず耳を疑った。
え????
あなたいつ落ち込んでましたっけ??
転校してきてからずっと元気に友達作りしてましたよね?
そんな俺の困惑をものともせずに、転校生は話を続ける。
「けど、伊織くんが助けてくれるから、僕もがんばろ!って思えるんだぁ。だから、これからも仲良くしてね!」
……うん。
助けてるのは仕事だからだよ、とか頑張るなら騒ぎを起こさないように頑張ってください、とか言いたいことはたくさんあるんだが。
まず、一つ聞いてもいい?
俺とお前、いつ仲良くなったん???
俺たちの接点といえば、小鳥遊が騒ぎを起こして俺がそれを片付けに来るぐらいしかないんだけど。
……もしかして、その関係を『仲良し』って言ってるのか?
え?じゃあ何?
『これからも仲良く』っていうのは『これからも騒ぎを起こすのでお世話よろしく!』ってこと?ぶっ飛ばすぞ。
えええ……、全然仲良くしたくないんですけど……。
こいつは俺の胃を破壊しようとしているのか?もう限界だから勘弁して。
ていうか、なんでそんなニコニコしてんの?怖い怖い怖い。もしかしてサイコパスなんですか?
徹夜のせいか無駄によく回る頭で、そんなようなことをぐるぐると考えていたのだが。
「……ちょっと。いい加減にしてくれる?」
そこへ、先程から廊下の端で身を潜めていたはずの、雪見の声が割って入ってきた。
かわいい顔が不機嫌そうにしかめられ、その大きな瞳で転校生のことを睨みつけている。
雪見は怒ってる顔もかわいいなぁ……って違うそうじゃない。
あっぶねぇ、今一瞬雪見が女の子に見えた。しかも彼女だった。彼女が『もー!ちゃんと寝なきゃダメですよ?』って上目づかいでプンプンしてる幻覚が見えた。
いや俺なにきもい妄想してんだよ死ね。
「えっと……雪見くん、だよね?いい加減に、って……何が?」
「は?わかってないの?……君が言ってること、だいぶ失礼だよ」
「え、なんで?僕はただ、友達ができて嬉しくて……」
「だから、そもそも君と佐倉先輩は友達なの?友達だって言うんなら、先輩に迷惑かけんのやめなよ」
「迷惑なんて、そんな……。僕はただ仲良くしたいだけだよ!」
「その『仲良く』が迷惑なんだってば!!!」
待って待って。
俺が自己嫌悪に陥ってる間に、なんかすごいヒートアップしてるんだけど。
「ちょ、お二方とも、落ち着いてください」
「佐倉先輩、でも……!」
「雪見くん、僕は大丈夫ですから。……小鳥遊くん、申し訳ありませんが、風紀委員として、あなたと個人的に仲良くなることはできません。」
「えぇ?そんなのおかしいよ!風紀の人だってお友達がいないと可哀想だよ……」
「僕は一人でいるのが好きなので、ご心配には及びません。それでは、僕はこれで失礼しますね。小鳥遊くん、気をつけて寮へ帰ってください」
まだ納得していなさそうな小鳥遊に、一方的に言葉を並べ立てて、無理やりにでも話を終わらせることにした。
早く風紀室に帰らないと、割とマジで仕事が間に合わないから。やばいから。
優等生スマイルでにこやかにお辞儀をして、小鳥遊が黙っているうちにさっさと背中を向ける。
さりげなく雪見の手を引いて連行しつつ、なんとか離れることができた。
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