梅雨の様なこんな雨の日に

はなおくら

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「とは言っても…結局分からずじまいだったけどね。でもコンサートで見かけた時は驚いたよ。」

 そうだと思う。

 あんなに肌を露出させて厚い化粧でツーリーにあったことなどなかったのだから。

「君に会えたと思う感情と横の男に腹がたった。」

 ツーリーはわたしの頬を撫でる。

「当たり前に手に入ると思っていた大切な人が違う男に抱き寄せられていたんだから。」

「ツーリー…それは…。」

 返す言葉もない。

 彼を傷つけてしまった事はわかる。

 でもあの時のわたしにはどうしようもできなかった。

 ツーリーはわたしを抱きしめて笑った。

「でもいいんだ。君はぼくのとこに戻ってきたんだから…。」

 本当にそうなのか、何の身分もないわたしが今までのことを無かったことにできるのだろうか。

「ツーリー…貴方の気持ちはとても嬉しい…その気持ちに応えたい…でも…わたしにはどうすればいいのか…。」

 この世界では身分がものを言う、貴族の娘が落ちてまた這い上がっても一生噂の的になる。

 不安な気持ちでツーリーを見上げた。

 わたしは驚いた。

 ツーリーの瞳からマイナスな感情はいっさい無かった。

 逆に堂々として眩しいくらいだった。

「ナナ、さっきも言っただろう?僕は君がいてくれるならそれでいいんだ。他の誰かなんて関係ない。君もさっきの夜会のように堂々としてればいい。」

「ツーリー…。」

「君は、君の好きな事を見て僕と幸せに生きてほしい。小さい頃からこれが僕の願いだ。」

 彼の深い愛情を知り、涙が出てくる。

「ありがとう…ツーリー…。私…貴方と生きてく。」

「あぁ…これからはずっと一緒だよ。」

 私たちはどちらからともなく抱きしめあった。

 それからツーリーの行動は早かった。

 娼館に身請けという形でわたしを引き取ってくれた。

 ツーリーに感謝しつつも心残りがあった。

 娼館で働いているロジーだった。

 彼女のおかげでわたしは綺麗な身体のままツーリーに会うことが出来た。

 せめて彼女を自由にしてほしい。

 そんな願いはおこがましいと思いつつもわたしはツーリーに話した。

「ツーリー…お願いがあるの…。」

「ナナの頼みなら何だって聞くよ。」

 笑顔でそう言ってくれるツーリーに私は勇気を出して伝えた。

「あのね…娼館にロジーという女性がいるの…その人にたくさん助けられて…わたしは貴方の前に立つことが出来たと言っても過言ではないの…。」

 ツーリーは真剣な顔で言った。

「その女は、君を陥れるような人間ではないのか?」

 わたしはカッとなって彼の顔を見た。




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