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それから荷物の整理を整えて、あっという間に本館に行く日が来た。
本館に行くのにだいぶ久しぶりな気がする。
小さい頃はよくお互いの家を行き来していたので懐かしい気持ちになる。
今はツーリーの両親も亡くなり、ツーリーだけが唯一の当主となっている。
「ナナと一緒に帰ることができるなんて夢の様だ。」
嬉しそうに微笑む彼にわたしも笑顔になる。
「本当に…わたしも嬉しいわ。」
「ナナ…行こうか。」
「うん。」
ツーリーと馬車に乗って、彼と再開した別荘に別れを告げた。
本館まで3日もかかる距離のため、私達はその都度宿に泊まった。
2日まではよかったものの、馬車の旅疲れのせいか私は本館に着く手前の最終日体調不良を起こした。
うずくまる私の背中をツーリーは撫でながら、馬車を止めて休む時間を増やしてくれた。
「ごめんなさい…みんな大変な中足を引っ張ってしまって…。」
「気にしなくていい。ナナは僕に甘えてくれればいいんだ。」
そこから返事もできずにいてもツーリーは何も言わずに優しく介抱してくれた。
予定とはだいぶ遅くなったが、無事本館に辿り着いた。
屋敷の使用人達との挨拶を済ませて部屋に案内されるまではよかったが、わたしはそこから一週間高熱を出した。
「ナナ…すまない…無理をさせてしまって…。」
横たわるわたしのベッドの横で、辛そうな顔をするツーリーがいる。
「慣れてなかっただけだから、心配しないで…それよりもあなたは休めてる?」
ツーリーが、寝てないんじゃないかと心配になった。
「僕は大丈夫だから、それより君の方が心配だよ。」
「大丈夫、寝ればすぐに良くなるわ。」
「わかった。もう気にしなくていいから、休むんだ。」
そう言ってツーリーはわたしのおでこにキスをした。
わたしを目を閉じて彼のキスを受け入れてそのまま夢の中へと入っていった。
そして数日後、旅の疲れも吹き飛んだ。
あれからツーリーと散歩が日課となった。
そのおかげか少し体力がついた様な気がする。
「君が元気になってくれてホッとしたよ。」
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫よ。」
彼の優しさが身に沁みて、愛おしく感じる。
「ナナ、君も元気になった事だしそろそろ婚約披露宴をしようと思うんだ。…どうかな?」
「………。」
恐る恐る伝える彼にわたしは黙ってしまった。
嫌なわけではない、むしろ嬉しいがそれをどう表現していいのかわからなかった。
「ナナ…?」
わたしの名前を呼びながら、不安そうな顔をする彼にこれ以上またしてはいけないと、私は心からの笑顔を浮かべて頷いた。
本館に行くのにだいぶ久しぶりな気がする。
小さい頃はよくお互いの家を行き来していたので懐かしい気持ちになる。
今はツーリーの両親も亡くなり、ツーリーだけが唯一の当主となっている。
「ナナと一緒に帰ることができるなんて夢の様だ。」
嬉しそうに微笑む彼にわたしも笑顔になる。
「本当に…わたしも嬉しいわ。」
「ナナ…行こうか。」
「うん。」
ツーリーと馬車に乗って、彼と再開した別荘に別れを告げた。
本館まで3日もかかる距離のため、私達はその都度宿に泊まった。
2日まではよかったものの、馬車の旅疲れのせいか私は本館に着く手前の最終日体調不良を起こした。
うずくまる私の背中をツーリーは撫でながら、馬車を止めて休む時間を増やしてくれた。
「ごめんなさい…みんな大変な中足を引っ張ってしまって…。」
「気にしなくていい。ナナは僕に甘えてくれればいいんだ。」
そこから返事もできずにいてもツーリーは何も言わずに優しく介抱してくれた。
予定とはだいぶ遅くなったが、無事本館に辿り着いた。
屋敷の使用人達との挨拶を済ませて部屋に案内されるまではよかったが、わたしはそこから一週間高熱を出した。
「ナナ…すまない…無理をさせてしまって…。」
横たわるわたしのベッドの横で、辛そうな顔をするツーリーがいる。
「慣れてなかっただけだから、心配しないで…それよりもあなたは休めてる?」
ツーリーが、寝てないんじゃないかと心配になった。
「僕は大丈夫だから、それより君の方が心配だよ。」
「大丈夫、寝ればすぐに良くなるわ。」
「わかった。もう気にしなくていいから、休むんだ。」
そう言ってツーリーはわたしのおでこにキスをした。
わたしを目を閉じて彼のキスを受け入れてそのまま夢の中へと入っていった。
そして数日後、旅の疲れも吹き飛んだ。
あれからツーリーと散歩が日課となった。
そのおかげか少し体力がついた様な気がする。
「君が元気になってくれてホッとしたよ。」
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫よ。」
彼の優しさが身に沁みて、愛おしく感じる。
「ナナ、君も元気になった事だしそろそろ婚約披露宴をしようと思うんだ。…どうかな?」
「………。」
恐る恐る伝える彼にわたしは黙ってしまった。
嫌なわけではない、むしろ嬉しいがそれをどう表現していいのかわからなかった。
「ナナ…?」
わたしの名前を呼びながら、不安そうな顔をする彼にこれ以上またしてはいけないと、私は心からの笑顔を浮かべて頷いた。
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