梅雨の様なこんな雨の日に

はなおくら

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「ナナっ…!」

 ツーリーはきつく抱きしめられる。

 彼が心の底から喜んでくれているのがわかって嬉しくなる。

 私自身、ずっと彼を愛してきた。

 もう離れなくていいのだと思ったら涙が出てきた。

 そんな私の泣き顔を見てツーリーは再びわたしを優しく抱きしめ返してくれる。

 そうして私達は、婚約披露宴に向けてがんばっていこうと決めた。

 婚約披露宴といっても、長く貴族から離れていたため不安だったが、ツーリーの執事のアランが助言をくれる。

 アランはツーリーの幼少期の遊び相手でもあったためわたしとの面識があり、わたしがこの屋敷に入った時、一番に歓迎してくれた人物だった。

「ナナ様、お花のお色はどうしましょうか?」

 ある程度の事をわたしを尊重しながら決めてくれる。

「白い花…はどうでしょう?」

 白い花は彼がわたしのまでに植えてくらたものであり、わたしに馴染み深い花だった。

 そして花言葉は、純潔だった。

 今回、彼と再び婚約すると言う事で取り入れたいものだった。

「いいですね。では別荘にある花を取り入れましょう。」

 アランは気を回してくれた。

「ありがとうございます。」

「いえ。それからナナ様の後見人の事なのですが…。」

 少し言いづらそうにしているアランにわたしは察しがついた。

「そうね、流石にその問題を解決しなきゃね…。」

「はい…。ご主人様からは二組の家のものに候補が上がっております。」

 そう言ってアランが見せてくれたのは、二組の家の情報だった。

 1組目は、エバン伯爵家という夫婦の家柄だった。

 人柄は夫婦共におおらかな性格でどちらも後ろで控えている様な者たちだという、ツーリーとの関係性は遠い親戚と記されている。

 二組目は、リノリュア伯爵の夫婦であり、子供が男子と女子が1人ずついるとのことだった。

 こちらも真面目な性格で向上心があり、進んでわたしを後見人にと望まれたという、ツーリーを支える貴族の家系だと記されていた。

「ご主人様は一度お会いになられて決められるのがいいのではないかとおっしゃっていました。」

 ツーリーは婚約者披露宴の準備のため、王都に出ていて不在だった。

 彼に負担をかけてはいけないと、わたしはアランの顔を見た。

「おっしゃった様に一度お会いして決めさせてください。」

 そうしてはわたしは、別日にそれぞれのご夫妻に会うこととなった。

 初めに会うことになったのは、リノリュア伯爵夫妻だった。

 あった印象は、隙が無く真面目な印象が見て取れた。

「本日は後見人の候補に名乗りあげていただき感謝します。」
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