梅雨の様なこんな雨の日に

はなおくら

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 わたしの問いかけにスノア令嬢は、勝ち誇った表情を浮かべて言った。

「わたしはツーリー様の正式な婚約者よ。」

「えっ⁉︎」

 突然の発言にわたしは思想が停止してしまった。

 どういうことなのか。

 ツーリーとは幼少の頃から婚約者通しだった。

 娼館に行っていた期間は確かに破棄されている。

 それならその間に?

 どういうことなのか混乱してしまいうまく言葉が出てこない。

「いい加減にしろ!スノア令嬢、約束も無しに訪問するとは失礼だ。わたしの隣にいるナナはわたしの婚約者だ!君じゃない。…連れて行け!」

 横からでも感じるほどひどく怒ったツーリーはスノア令嬢を追い出した。

 スノア令嬢も固まってしまいその場を追い出されてしまった。

「ツーリー…」

 彼の名前を呼ぶと、ツーリーは私を掻き抱くように抱きしめた。

「ナナ!驚かせてすまない!スノア令嬢よ事はきっちり話すからっ…誤解だからっ…離れないでくれっ…!」

 突然尋常じゃないほど懇願する彼に私は逆に落ち着いてきた。

「わかったわ。わたしは貴方を信じてる、だから落ち着いて。」

 ツーリーの背中を撫でて、彼の呼吸を落ち着かせた。

 それから2人で椅子に座った。

 ツーリーは何が不安なのか、わたしを膝に乗せた。

「ツーリー、重たいでしょ?隣に座るわ。」

「だめだっ!」

 彼に怒られてしまいわたしは仕方なく彼の膝に乗ったまま彼に顔を向けた。

 ツーリーは不安そうに話し出した。

「ナナ…僕は君だけだ…。僕の気持ちは君にしかない…。」

「わかってるわ。」

「スノア令嬢は、父が生前君と婚約破棄させて僕と婚約させようとしていたんだ。」

「え…?」

 驚いてしまった。

 ツーリーのお父様とはそれほど話をしたことがなかったがまさかそんな事になっていたなんて。

 それを聞いて悲しくなった。

 自分は認められていないのだと感じる。

 落ち込んでしまったのがツーリーにも伝わった様で彼はわたしを抱きしめる。

「父さんの事は気にしなくていい…。」

「ツーリー…。」

 ショックではあるものの続きが気になり彼に続きを促した。

「しかし父さんは亡くなってこの話も流れたんだ。でもスノア令嬢は納得いかなかったのか婚約者はわたしだと言い張る始末…。」

 ツーリーは頭を抱え出した。

 そんな様子を見て、わたしはショックではあるものの変わらないツーリーに安心した。

 彼の胸に頭を置いた。

「お父様の決められた内容は悲しいけれど…貴方は変わらずにいてくれる…それがすごく嬉しい…。」

「ナナ、もちろんだ。たとえ父さんでも君との事は誰にも譲れない…信じてくれて嬉しいよ。」

 ツーリーはわたしをぎゅっと抱きしめた。
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