梅雨の様なこんな雨の日に

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　なぜなら聞こえず見えない分感覚が研ぎ澄まされてくる。

　手のひらに書いたツーリーの字がかなり違っている。

「…あなたは誰？」

「……。」

　返事もなくおかしいと思った瞬間、わたしの首筋にナイフの先の感覚がした。

　今自分は命の危機にあるのだと実感した。

「…なぜわたしを…？」

　わたしの問いかけに返ってくるものはなかった。

　張り詰めた空気の中、部屋に誰かが入る気配がした。

「っ……！」

　思わず押し黙ると突然わたしの顎を強引に持ち上げられる。

「くっ…！」

　あまりの痛みに声が漏れた。

　何かを言ってるのかもしれないが何も聞こえずわからない。

　唯、わたしの中でもういつどうなるかわからないのは感じた。

　あぁ…ツーリーに会いたい。

　彼の温もりを感じたい。

　今頭の中にはツーリーしかいない。

　あの夜会からわたしはスノア令嬢に何か入ったお茶を飲まされて、ここへ連れてこられたのだと推察した。

「スノア令嬢ね…。」

　そう呟くと、張り詰めた空気がまた流れた。

　しばらくすると、激しい痛みが頬に感じた。

　それは何度も何度もわたしの頬を傷つけた。

「っ…！」

　しばらくしてわたしが意識を失った。

　それは恐怖心からくる防衛本能だったのかもしれない。

　次に気がついたのは、私の肩を激しく揺すられる行為で目が覚めた。

　私の肩を痛いほど握る人は、わたしが目を覚ましたのに気づいて何か言っている。

　しかしわたしは傷つけられた恐怖から、その人の体を押し除けて距離を取ろうと布団の感覚をした場所から飛び逃げた。

　走る途中置物らしきものにぶつかりながらも出口を探した。

　わたしは壁の感覚がわかると急いでドアを探すために壁をつたった。

　しかしすぐに追いつかれてしまい後ろから抱きしめられた。

「いやっ…！ツーリー！ツーリー！」

　必死で彼の名前を呼んで後ろから抱きしめられる人物から逃げようとした。

　しかしその人物はわたしがどんなに暴れて逃げようとしても強い力でわたしを後ろから抱きしめるだけだった。

　初めはパニックを起こしていたわたし自身抱きしめたまま微動だにしない相手に疑問が生まれた。

　傷つけるわけでもなく、後ろから抱きしめたまま動かない。

　わからないがなんだか懐かしい感じがする。

　でも騙された時の事が警戒心を抱いてしまいますますわからなくなる。

「あなたは誰？」

　戸惑っている様子が伺がえる。

　わたしは後ろの人物に手を差し出した。

「手に書いて。」

　彼は私の手に手を添えて書き出した。

　“ツーリー。”

「…っ…本当に？」

　すると彼はまた私の手に書いた。