梅雨の様なこんな雨の日に

はなおくら

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 皇女様の歓迎会ということで大きな宴会が行われる事になった。

 婚約者としてツーリーと出席する予定だったのだが、皇女様の希望で今ツーリーは先に行っている。

 ツーリーもそのことを聞いてひどく不機嫌になっていたが、しぶしぶ馬車に乗り混んで出掛けていった。

 私もあまり納得いかなかったが身分の上の方に物申す事はできないため、笑顔で彼を見送った。

 それに彼と同じ明るい色がお揃いのため何も不安に思う事はないと、この時は自信があった。

 しかし遅れて会場に到着した時、皇女様とツーリーがダンスを踊る姿が目に入ってきた。

 周りが見守る中軽やかなステップを踏みながら軽快に踊っている。

 周りからも見惚れるような声が聞こえてくる。

「皇女様と宰相様とてもお似合いね。」

「本当よね、まるで昔から一緒にいたと言われても違和感ないわ。」

 悪気のない噂を聞きながらわたしは胸がちくちくと痛むのを隠すのに必死だった。

 ダンスが終わって、わたしに気づいたツーリーが皇女様に何か言ってこちらに向かってくる様子が見えたのだがその時、皇女様がその場で転んでしまい、近くにいた使用人が持っていたグラスが倒れてしまい、中の飲み物が皇女様のドレスを汚した。

 周りが困惑する様子の中、ツーリーは彼女の元に駆け寄った。

 彼女と何か話した後、ツーリーは皇女を横抱きにして持ち上げると会場を後にしたのだった。

 周りがさすが宰相様と褒め称える中、私は笑うことなんてできなかった。

 それからしばらく経ってもツーリーと皇女様が戻る事はなかった。

 何だかここにいても仕方ないと、わたしは会場を後にして、1人屋敷へと帰ったのだった。

 屋敷に戻り着替えを済ませて、ツーリーを待った。

 しかし待っても帰ってくる様子はない。

 彼の帰りを待つごとに胸の痛みは徐々に増していった。

 しかし宴会の疲れもあったのか、私は気づけば彼を待ちながら眠りについたのだった。

 目が覚めると私の横で寝息を立てているツーリーがいた。

 私を横にさせて布団を被せてくれたのだろう。

 彼の顔を見るとほっとしつつ妙に腹が立ってしまう。

 私が見つめているのがわかったのか、彼の瞳が開いた。

「ナナ…。」

 寝ぼけた顔で両手を広げて私を抱きしめようとする彼に縋りつきたい気持ちになりつつも、腹が立っていてこのままでは八つ当たりをしてしまうと、彼に背中を向けてベッドを降りた。

「……ナナ?」

 低い事で私を呼ぶ彼にわたしは振り返った。

「ごめんなさい。昨日の宴会で疲れてしまったみたい。やることもあるから先に行くわ。」
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