あなたが初めて

はなおくら

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「僕も特にないんだ。」

 それを聞いてホッとした。

 友人の中には好きな相手の苦手なものが多いとうんざりしてしまうとよく聞いていたから。

「じゃあ好きなものはありますか?」

「そうだね…これといってはないけどよく食べるのはビーフかな…。」

 一つ彼の好きなものが聞けて嬉しくなった。

「マリー様は好きなものはある?」

 思い浮かべてみると、甘いものが好きだと思う。

「そうですね…甘いスイーツはよく目がいっています。」

「そうか、なら今日のデザートが楽しみだな。」

 そんな会話をしながら私達は楽しい時間を過ごしたのだった。

 楽しい会話もあっという間に過ぎていき、気がつけば外は夕焼けで広がっていた。

 私の屋敷の近くまで馬車で送ってくれる事になって2人きりになった。

 目の前にユノ様がいる事が、何だが照れくさくて俯いていた時だった。

 突然彼が真面目な顔をした。

「マリー嬢、大事な話があります。」

 突然、近づいていた距離を離されるかのようにユノ様は敬語で話しかけてきた。

 さっきまでにこやかに微笑んでいた彼が何も笑わずに冷たい雰囲気を醸し出したので、不安になった。

「あの…なぜ…っ…。」

 動揺してしまい返事があべこべになる。

「マリー嬢には申し訳ないが、このお見合いはなかった事にして欲しい。」

「えっ…?」

 私の頭の中は疑問でいっぱいだった。

 さっきまで、あんなに仲良くたの楽しく話していたのになかったかのように、背を向けて彼は歩き出した。

「どうして…?」

 そう口から出した時には、屋敷の前に泊まった。

 外から御者の声が聞こえてきたが、反応することができなかった。

 どう降りたのかわからないが、顔を上げると馬車に乗るノア様の姿があった。

「…ノア様…。」

 彼は私の方を振り返りもせず馬車に乗り込むと早々に帰っていった。

「…どうして…。」

 納得できなかった。

 さっきまで楽しく過ごしていた。

 ノア様といるだけで笑顔が増えて楽しい、胸がドキドキして苦しくなるほど恋しくて…。

 自分の部屋に入ると、わたしは涙が流れてきた後から流れる涙が止められず声を殺して泣いた。

 いつの間にか疲れて眠ってしまったのか、目が覚めると毛布がかかっていた。

 誰か寝ている間に入ったのかと思い、私は当たりを見回した。

 その時、母が暖かい飲み物を持って部屋に入ってきた。

「落ち着いた?」

「……。」

 うつむく私を見透かすかのように隣に腰掛けると、持ってきた飲み物をテーブルの上に置いた。

「お父様も心配してたわ。」

 お母様はそれだけ言うと何も言わなくなった。
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