実は正体を隠していました。

はなおくら

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「これからどうするの?」

 アロンの方に胸を預けて私は言った。

「………。」

 彼にもわからないのだろう。

 婚約者までいて、私が子爵家の娘とは言え、どうすればいいのかわからない。

 ふと、アロンは私が子爵家の養女になった事について何も聞かなかった。

 私は彼の顔を見つめて言った。

「アロン、私が養女になった事何も聞かないけど、どうして?」

 するとアロンはにこりと笑って答えた。

「さっき母様に聞いたんだよ。今日イゼアに会った時、内心とても驚いたんだ。それで父様や母様の様子を見てて何となくね。」

「そうだったの…。奥様には感謝しかないわ…。本当は私に関わってはお立場が悪くなるのに…それにあなたも…。」

「イゼア…。」

 アロンは私を強く抱きしめて、口には出さないけど不安でいっぱいなのだろう。

 苦しいほど抱きしめながらアロンは言った。

「…このまま2人で誰も知らないところで暮らさないか?」

「アロン…。」

 彼の発言に驚きもしなかった。

 頭の片隅にそうしてしまいたい自分がいた。

 このまま誰もいないところで一から彼と生きていく。

 たとえ苦労しても後悔はしない自信があった。

 でも全てを放り出すわけには行かない。

 伯爵家には離れた家族もいる、それに自分を可愛がってくれる子爵家の家族、私たちを守ろうとしてくれた奥様の事を考えると首をたてには触れなかった。

「アロン、それはできないわ。…あなたもわかるでしょう?」

「わかってる…でも…。」

「2人で向き合いましょう…ダメかもしれない…でもどうにかなるはずよ…。」

 無謀な事だと分かりつつも、今このことに逃げて仕舞えばそれこそ後悔するはずだ。

 時計を見れば、そろそろ終わりを告げている。

「手紙を書くわ。だからこれから考えましょう。」

 アロンは、ため息を一つつくと頷いた。

「わかった。」

 アロンの背中を押してドアを開けようとした時、彼に腕を引かれて、別れのキスを交わした。

「愛してる…。」

「私も…。」

 そうして人目を気にしながら、アロンと別れて私は会場に戻り、その日を終わらせたのだった。

 それから彼と、密かに文通を交わし合った。

 彼からの愛の言葉に、自然と微笑んでしまう。

 彼の手紙にキスを落として、返事を書く。

 両親は、私が手紙のやり取りをしていることを話した。

 2人とも理解を示してくれている。

 そんなある日、アロンは旦那様と話をすると手紙にしたためてあり、待っていて欲しいと書いてあった。

 私は彼の言葉にしたがい、彼の返事を今か今かと待っていたが、それからアロンからの連絡がぷつりと消えてしまったのだった。
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