愛した人は悪い人

はなおくら

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「…カルア…を…?」

 レイモンド信じられないと言った顔でソーレを見ていた。

「えぇ…。あの子はあなたの実の妹でもないわ!それにあなたはあの子に大切な事も話さずにいるじゃない。なおのこと都合がいいわ。」

 目を見開いたまま固まった。2人の言っていることを理解するのが難しい。

 この2人は何を言ってるの?

「あの子はあなたが命を狙われていると知れば、手を上げてこの作戦に乗るはずよ。」

「……もうやめろっ‼︎!」

 レイモンドの怒声が響き渡った。彼があんなに怒る姿を今まで見たことがない。

 びっくりして体が縮こまりながらも2人の話に耳を傾けた。

「カルアは大切な子だ。そんな事に巻き込みたくはない。」

 そういうレイモンドにソーレは顔を歪ませた。

「あなたはいつもそうね!何かあればあの子のことばかりっ…いつまでもそうできるわけないわよ!」

  これ以上は聞いていられなかった。2人が長年結婚できなかったのは自分のせいであると自覚した。

 2人にわからない様に部屋に戻った。扉を閉めた瞬間、今まで守られて囲われていた疫病神にでもなった気持ちだった。

 そしてレイモンドの命を狙う相手とは誰のことなのだろう。

 カルアは翌日の朝一にソーレの部屋に訪問した。

 日の出前に静かに彼女を訪ねると、昨日の言い合いの表情はどこへ行ったのかわからないほど、穏やかな顔で出迎えてくれた。

「カルア?どうしたの?」

「いえ…ただ兄の婚約者と話がしたいと思ったの。」

 カルアはこの時、口をつぐんだ。

 本当は、私が嫁ぐと言いたかったが、ソーレには何か嫌なものを感じた。

 瞬時に違う話をして誤魔化して、そのまま部屋を出た。

 部屋を出てすぐ扉の前にはレイモンドが立っていた。彼は優しい顔で私を見つめ名前を呼んだ。

「カルア、どうした?」

 いつもなら満面の笑みで返事をするが、今日はどう返していいのか分からず、曖昧に答えていた。

「いえ、ソーレ様とたくさん話をして、疲れてしまったみたい…部屋で休みます。」

 そう言ってレイモンドの横を通り過ぎようとしたその時、カルアは腕をひかれた。

 気づけば、レイモンドの腕の中にいた。

「レイモンド兄様…!」

 心臓が早鐘を打つように鳴り響く、それと同時に切ない思いに駆られてしまう。

「何かあればいつでも頼ってくれ。」

 その言葉に、嬉しくも自分が情けなく感じていた。

「ありがとう…兄様…。」

 そう返事をして、カルアは部屋に戻って行った。

 その夜、カルアは兄の命を狙う相手は誰のことなのか、考えていた。

 レイモンド兄様をここまで執拗に狙う相手とは、何が目的でこんなことをするのだろうか?
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