愛した人は悪い人

はなおくら

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 考えてもキリがない。どうにかその相手と接触できないかと考えていたその時、窓辺に黒いマントをまとった影が横を通り過ぎた。

 すかさず窓際に立ちその姿を追った。黒い影が進んでいる先は、レイモンド兄様のいる部屋だった。

 カルアは、そっと部屋を出て、誰にも見つからないように黒い影の跡を追っていった。

「ハァ…どこに言ったの?」

 レイモンドのいる部屋の近くの庭まで追いかけてきたが、相手を見失っていた。

 あたりを見回しても、いつも見慣れた花たちが顔を出しているだけだった。

「どこへ行ったの?」

 その時、パリンっと頭上から黒い影が飛び出していた。

 割れた窓から、レイモンドが真顔で黒い影を見つめていた。

 カルアはあることを思いつき、そこから急いで身を隠して、レイモンドが窓から離れるのを待った。

 しばらくして、使用人が騒ぎを聞きつけたのか、レイモンドも奥へ入って行き姿が見えなくなった。

 彼の安全を安心しつつ黒い影の跡を追おうとあたりを見回すと、幸いにも怪我の血の跡がみつかり、それを追って走り出した。

 しばらく進むと、草の茂みに身を隠すように足を立ててしゃがみ込んでいる男がいた。

 男は、カルアの存在に気づいた瞬間、ナイフを投げた。

 しかし、怪我をして反射神経が弱っていたためか、ナイフはカルアの横を掠めていた。

 カルアは心臓が止まった心地がしたが、唾を飲み込み動じない意志を固めて男に声をかけた。

「貴方はなぜレイモンド兄様を殺そうとするの?」

「……。」

「お願い…答えて…。」

「………。」

 男はダンマリを決め込んだまま何もいわない。そんな男にカルアも甘い事を言っているのはわかっていたが、自分の命よりも大切なレイモンドをどうにか救いたい一心だった。

「あなたにとって兄さんがどういう人かわからないけど…私にとっては大切な人なの…お願い…なぜ命を狙うの…?」

 カルアの真剣な瞳を見たからか男は息を一つつくと立ち上がり言った。

「あの男は、たくさんの命を見殺しにしてきた男だ。妹のお前には悪いが、このまま野放しにするつもりはない。」

「どういう事…?」

 男の言っている意味がわからなかった。カルアにとってレイモンドは、そんな残虐性を持った人間ではなかった。厳しくもあったが、常に自分よりカルアの事を優先していた。

「わかりません…あなたの言ってることがわかりません…。」

 本当にわからなかった。男がそこまでレイモンドを狙うことも、レイモンドという人間を語る姿と自分が思っていた彼の姿が違うことも…。
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