愛した人は悪い人

はなおくら

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 急すぎる返答に困惑したが、相手の状況を見れば頷ける。

「わかった。なら明日の夜までまってもらえないかしら?」

「わかった。でも本当にいいのか?お前はやつが好きなはずだ。なぜ苦難の道をいこうとする。」

 シューザの問いにカルアは迷いなく答えた。

「愛してるから…真実を知りたいの…。」

「…そうか…。お前はいいやつだな…。」

 シューザはそう答えるとカルアの頭を撫でた。

 それからシューザと別れたカルアは急いで部屋に入り、使用人を下がらせると急ぎ部屋の衣装棚から、身軽な服とローブを誰もわからないところに隠した。荷物は何も持ち物がないので、何も持たずに…。

荷造りが終わり、ふと部屋を見渡すと当たり前に過ごしていた場所に名残を感じてしまう。

 初めて、この部屋に通された時の事を思い出していた。

 ボロボロの身体を綺麗にしてもらい、レイモンドの暖かい手に引かれて、この部屋に通された事。

 幼いうちは、レイモンドの膝の上に座りたくさん話をする自分に、笑って頷いてくれる彼の顔…。

 思い出してみれば、彼中心の生活の中を過ごしていた事を思い出し、涙が流れてきた。

 ここを出れば、彼と会えるのは最後になってしまうかもしれない。

 離れる事がこんなにも身を斬られる想いがするのかと本当に辛い。

 泣くだけ泣いて、気がつけば夜になっていた。明日のこの時間にはもう自分はここにはいないだろう。

 コンコン。

 ドアの叩く音がした。カルアが返事をすると執事がドア越しに口を開いた。

「お嬢様、夕食の支度が整いました。レイモンド様とソーレ様がお待ちです。」

「…わかりました。すぐ向かいます。」

 そうして、簡単な身支度を整えてカルアは食堂へと向かった。

 食堂に入ると、ソーレがレイモンドのご機嫌を伺っていた。そんなソーレを相手にもしていないのか適当に相槌を打つレイモンドだった。

 カルアは、この光景もまたこれで最後なのだと思うと普段煩わしく思う嫉妬心も愛おしく感じていた。

 レイモンドに大切な人がいる。カルアからしてみれば、あまりいい印象を持たないソーレだが、彼を支えてくれるだろう。

「カルア…?どうかしたのか?」

「はい?」

 顔を上げれば、レイモンドが心配な顔をしてこちらを見ていた。

「何も話さないから、何かあったんじゃないか?」

 常に気にかけてくれるレイモンドに対してカルアは、胸が張り裂ける想いがしたが、自分に仮面をして笑って見せた。

「疲れているだけです。今日は早めに休む事にします。」

 そう言い、食事も早々に済ませて立ち上がり部屋に戻った。
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