愛した人は悪い人

はなおくら

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 部屋に戻った時、なんだか安堵した。たくさん泣いて食事をとったからかもしれない。

 カルアは身体が疲れていたのか、ベッドに横になってすぐに寝息を立て始めていた。

 どれくらい眠っていただろうか、目が覚めたとき、窓から月が爛々と輝いていた。おそらく深夜だろう。

 すっきりと目が覚めてしまい、外の空気を吸いに、羽織を体にかけてそっと裏庭へと向かった。

 月の光のおかげか、裏庭に灯りもなく過ごすことができた。

 この屋敷に来てする事を禁じられていたが、今日くらいはとカルアは薔薇の咲く植木の横にそのまま座り込んだ。

 上を見れば月、隣をみれば赤いバラから甘く切ない香りが、心を落ち着けてくれた。

 目を閉じれば、自然の心地いい空間に身体が包まれているような気になった。

 サクッ……。

 カルアが目を開けると、レイモンドが立っていた。

「お兄様…?」

 呆然とレイモンドを見つめると、彼は口を開いた。

「カルア…どうした?」

「………。」

 彼の整った顔立ちに、目が離せなかった。

「いえ…兄様こそ、こんな遅くにどうしましたか?」

 レイモンドは頭を触りながら答えた。

「いや、今日は眠れなくてね。窓を見てお前がここにいるのを見かけてね。」

「そうでしたか。」

 2人の間に静寂が包まれる。心地いいような緊張するようななんとも言えない気になる。

「お前が今日、元気がなかったが…何かあったのか?」

「いえ…。」

 優しいレイモンドの気持ちに、カルアは涙が出そうになるのを力み我慢した。

 これ以上ここにいてはいけないような気がして、カルアは立ち上がった。

「そろそろ眠れそうです。お先に失礼しますね…。」

 カルアが横を通り過ぎようとしたその時、カルアの体を強く抱き締めるレイモンドがいた。

「兄様…!ご冗談はよしてください…。どうされたのですか?」

 高鳴る胸を隠して、彼の胸を押し、何も気にしていないフリをして笑い流そうと努めていると、

「カルア…お前がわたしから消えてしまうような気がして怖いよ…。お前はわたしのそばを離れないだろ?」

 すがるような必死なその問いに、嬉しく思う。

 何も知らずに彼の側に一生生きていければと思う。でもそれはできない。それならば、彼が安心して過ごせるように考えていきたい。

「レイモンド兄様、そんな事を言ってはソーレ様が誤解されますよ?言う相手が間違っています。」

 それでも、強くカルアの体を抱き締めるレイモンドに対して、カルアは瞳を強く瞑り、力一杯彼を両手で押した。

「兄様には感謝しています。ここまで育てて頂いて…。今のわたしは兄様が愛する人と幸せになってほしいだけです。」



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