愛した人は悪い人

はなおくら

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 その光景はカルアにとって、嫌なものと一言では表せないが、鮮明に思い出すものがあった。

 レイモンドに引き取られてから、気にしない様にしていたが、両親を思い出しては泣く日々でもあった。

 目の前の小屋で当時支え合いながら身を寄せ合い生活していた。

「どうしたんだ?」

「ここは…わたしが両親と暮らしていた場所なの…。」

「そうか。」

 シューザは驚きもしなかった。

「驚かないのね…。」

「………。」

 それ以上何も言わないシューザに悪い気はしていなかった。

「私の両親も今あの小屋に住んでいる家族の様に…今よりマシかもしれないけれど、身を寄せ合っていたの…。」

 そう呟いた瞬間、涙が流れてきた。

 カルアの背中を優しくシューザは撫で慰めた。

「何故…お兄様はこの事を知らないの?…どういうことなの?」

 やりきれない想いになる。その時、小屋から小さな女の子が、自分以上の重い荷物を抱えて出てきて、ふらふらしながら歩いていたかと思うと、石に躓いたのか転んだ。

 それでも涙を浮かべながらも荷物を必死に持つ。これから街へ行き、物を売るのだろう事が伺えた。

 カルア見ていられず、少女に近づき手元にあったパンを持たせた。

「わたしにはこれぐらいのことしかできない…。」

 そう呟いてその場を去る様に歩き出した。その背後を何も言わずにシューザもついていく。

 村を抜けたその夜、近くの湖で休む事になった。休む準備も終わり一息ついた頃、ふと湖に自分の顔を写した。

 顔色よくふっくらとした自分、これもレイモンドに拾われたおかげだ。しかし何故彼はここまで酷い状況を知らないのだろうか?

 不思議に思っていると、焚き火を見ていたシューザが口を開いた。

「カルア、少しいいか?」

「…はい?」

 なんだろうと振り向くとシューザはこちらに視線も向けず焚き火に集中して言った。

「俺がお前の兄を狙った経緯だ…。」

 追い詰まった顔のシューザに、カルアは何も言わずに焚き火の近くに腰掛けた。

 カルアが座ると、シューザは静かに語った。

「俺は、とある人に頼まれてやつを狙っている。」

「………。」

 なんとなくそんな気がしていたが、彼の話に耳を傾けた。

「その人は、この領地のことを一番に考えている。だがお前の兄はとあることに執着して現実を見ていない…。その事があの人をここまでさせて原因なんだ。」

「…お兄様が執着…どういう事…?」

 原因が分からずそう聞き返す。レイモンドが何に執着しているというのだろう。

「お兄様は何に執着されているの?」

 シューザにそう聞き返すと、彼は困った様な泣きそうな顔をしながら、カルアの頭を撫でた。
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