愛した人は悪い人

はなおくら

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 カルアは悲しかった。レイモンドが目の前でしている光景は何にも耐え難かった。

「ここにカルア様が泊まっているはずだ。」

 兵士の1人が威圧的にそう放つ。子供を人質に取られた夫婦は身動き取れず子供の心配をしている。

「黙っていないで答えろ!」

 カルアは耐えられず、動き出した。

「カルア!」

 シューザは、カルアの手を掴み止めた。

「落ち着け!」

 シューザの言葉にカルアは拳を握りしめて、静かに答えた。

「離して…。私はこんなあの人を見たくてここにいるんじゃないの…。私はあの人を止めたい。それにわたしが目当てなんだから。」

「しかし…お前が出れば危険だぞ!」

 シューザの必死な言葉に、ありがたみを感じる。

「ありがとう…でもここで止めなかったら私は一生後悔する…それはいや…。」

「………。」

 カルあの目には涙が流れていた。シューザは目を見張るほど彼女の目を見ると強い意志を感じられた。

「わかった…あの領主もお前には手を出さないだろう…俺はここにいよう…。事が終われば向こうの灯台に待ち合わせしよう。」

「ありがとう…。」

 心強い言葉を聞いてカルアは急ぎ下へ降りた。

 宿屋に近づき、騒ぎの近くへ来ると、震える宿屋の夫婦と兵士に捕まっている子供が怯えている。

 レイモンドは真顔で、前を向いたまま動かなかった。

 カルア近づき声を掛けた。

「レイモンド兄様…。」

 その瞬間、レイモンドは振り向きあっという間にカルアを抱きしめた。

「カルア…カルア…!」

 だがカルアは強い怒りを覚えていた。

「レイモンド兄様…これはどういう事です!」

 カルアの怒りにレイモンドは動揺した。

「それは…。」

 言葉を続ける前に、人質にされている子供を見た。

 カルアは子供達へ駆け寄りレイモンドを睨んだ。

「子供達を解放してください。」

 レイモンドは一つ息をつき、兵士の方へ片手を上げると子供達は親の元へと走って泣きついた。

 カルアは、その家族の元へと近づきわずかばかりの金貨を主人に持たせた。

「…ごめんなさい。」

 そう小さな声で謝ると、主人は何かを察したのか首を横に振り頭を下げた。

 その姿を背にしてまたレイモンドに近づいた。

「兄様、どうしてこちらへ?何故こんな騒ぎを…?」

 カルアがそう問いかけると、動揺していたレイモンドが怒った顔をした。

「カルア…お前が屋敷を出ていくから探したんだぞ!外の世界は危ない…私たちの屋敷に帰ろう。その方が安全だ!」

 心配してくれたのは嬉しい事だが、カルアの心は決まっていた。

 村や町で見かけたレイモンドの印象、姿、そして今見た騒ぎに対して感じたことをカルアは言った。

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