愛した人は悪い人

はなおくら

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 暗殺まで送り出していた人間の言葉じゃないと、ジーヌは思った。

「………。」

 レイモンドは凄んだ目つきでヴィンを見たが、しばらくしてからため息をついて言った。

「ジーヌもいるんだ。今までの事は水に流す。」

 そうは言ってもレイモンド自身まだ警戒心を解け切れていなかった。

 そしてまたジーヌに視線をやった。

「そんなことより、ジーヌ…ヴィンと婚約したいと言うのは本当なのか?」

 顰め顔でそう聞くレイモンドにジーヌは頷いた。

 心のうちは違うと言い訳したかったが、これもレイモンドの為と思った。

「兄様…ヴィン様は私を大切にしてくれるの…。」

 友人としてだが…。

 ジーヌの本音を聞いてから尚レイモンドの顔がきびしくなる。

「ジーヌ、二人で話がしたい。」

 レイモンドの言葉にヴィンの顔を見ると、ヴィンは頷いた。

「わかりました…。」

 そうして、レイモンドと二人で人気のない中庭へと移動した。

 さすが王室なだけあり、広い庭に個人スペースが何個もあって二人で話をするのに適していた。

しばらく沈黙が続いていたが、レイモンドが口開いた。

「ジーヌ、教えてくれ…君はなぜ僕の邸をでていきヴィンの所にいるんだ。…それにいつから…っ…!」

 顔を歪ませてレイモンドは問い詰めるように言った。

「レイモンド兄様…ごめんなさい…。最初は外の世界をみたかったの、外へ出てレイモンド兄様の話を聞いて変わって欲しかった…誰からも愛される人になって欲しかったの…。」

 事実とは少し異なるが、ジーヌはレイモンドに思いの丈をぶつけた。

「ジーヌ…すまなかった。お前を幻滅させたな…。」

 悲しげな表情でこちらを見る。

「もういいんです。兄様は変わってくれましたから…わたしにはそれが一番の喜びでありあなたを誇りに思います。」

 ジーヌが微笑むとレイモンドは目を見開いた。

 そんな彼の反応を見ながらジーヌは話を続けた。

「それからヴィン様に出会って…。」

 ここからはヴィンを愛する婚約者として演技を始めた。

 そんなジーヌの表情をレイモンドが苛立たしげに見ていることも知らずに。

「兄様…ヴィン様から聞きました。なぜあなたが私にカルア様の名前をつけたのかも…。」

「…ヴィンに聞いたのか?」

「はい…。」

 そういうとレイモンドは空を仰ぎみた。

「隠していたつもりはなかった。ジーヌ、お前と会う前に妹を亡くした。……これもヴィンから聞いてるか?」

 ジーヌは一つ頷いた。

「そうか…。わたしは恨みに取り憑かれていた。父が早く亡くなり、父から学ぶ前に領主の勤めを果たさなければならなかった…。そんなわたしを妹は陰ながら支えてくれていた…。」

 レイモンドはそう語ると目を強く瞑り、手を強く握りしめた。
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