愛した人は悪い人

はなおくら

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「レイモンド?」

 あたりを見て回るが彼はいない。それがすごく寂しく感じるが、切り替えて身支度を整えた。

 準備ができた頃、レイモンド付の執事が顔を出した。

「お嬢様…心配しましたぞ。」

 少し怒っているような本当に寂しがっているような声で言われる。

 この執事には、ジーヌは世話になっていた。厳しくもあったが、貴族のしきたりを教えてくれたのはこの人だった。

「心配かけてごめんなさい…。もう無茶はしないわ。」

「そう言っていただけて安心しましたぞ。さぁ…旦那様から話しは聞いております。」

 執事に案内されて、食事の広場へと急いだ。中に入ると、嬉しそうにレイモンドが座って待っていた。

「ジーヌ、おいで…。」

 ジーヌは、少し遠い向かいの席に座るものだと思っていたが、なぜかレイモンドは自分の方へと手招きしている。それが嬉しくもあってそろりと歩を進めた。

「ジーヌ…愛おしい…。君がいないこの屋敷にいるのは地獄のようだった。」

「レイモンド様…。」

「今日は君の好きなものを作らせた。遠慮せずに一緒に頂こう。」

「はい。」

 そう言ってジーヌが隣の席へ移動しようとしたが、レイモンドはジーヌの腰をだき、自分の膝の上に乗せた。

 ジーヌは恥ずかしくなり俯いた。

「レイモンド…他の人が見ています…。こんな…恥ずかしい…。」

 ジーヌが赤面させてそういうと、レイモンドは片手を上げて、使用人を外へと出した。

「これで君と私の2人だけだ。顔をあげてほしい。」

「………。」

 他の使用人が出て少し落ち着き、レイモンドの瞳を見つめた。

 その瞬間、胸の中に甘酸っぱい電気が走った。

 彼の深く熱い眼差しに思わず手が震える。

 そうしているとレイモンドが切なげな瞳で顔を近づけた。

 この後起こることにジーヌはそっと受け入れた。

 唇に温かい感触が伝う。彼の吐息を感じるたびに胸が切なくなり、自ら彼の肩に腕を回した。

 するとレイモンドもそれに応えるかのように口を開け、ジーヌを弄ぶ。

「レイモンド様…っ…!」

「ジーヌ…愛してる…。君は僕をどう思ってるのかな?」

「愛しております…。あなたのそばを離れてどれほどくるしかったか…。あなたの温もり…視線…が他の人に向いていると思うとおかしくなるようでした…。」

 自分の気持ちを伝えていると、今まで秘めていた想いと共に涙が溢れてくる。

「私もいつの頃からだろう…出会った時には妹の代わりになればと考えていたが…いつの頃だろうか…お前が他の男の物になると思うと気が狂わんばかりだった…。」
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