愛した人は悪い人

はなおくら

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 彼女は本当に彼を愛していたのだろう。その気持ちは分かるが、ならば何故愛する人が堕ちていく事を容認し、手を黒く染める事をしたのだろうか、自分であれば相手の幸せを願い、たとえ嫌われてでも止めるとジーヌは思っていた。

「ソーレ様、あなたには悪い事をしました…。ですが、レイモンド様を愛しているのなら…何故、彼の蛮行を止めなかったのですか?」

 ジーヌがそう問いかけると鼻で笑いながらソーレは答えた。

「何も知らずに守られていただけのあなたに私を問い詰める事ができるの?」

 そう言われるとジーヌは何も答えられなかった。

 自分もまた無邪気に笑って過ごしていたのだから。

「彼女は悪くない。ソーレ嬢、私もあなたも自分が選択してやってしまった事だ。君にはすまない気持ちでいっぱいだ…。だが私は君がどうあれ、君では変わる事はなかっただろう…。こんな形で婚約破棄する事は申し訳なく思う。」

 そう言ってレイモンドも心からの謝罪をした。

 その事がソーレを追い詰めたのだろう。

「私は認めませんわ…。あなたも間違っていたと思う日がくるわ…フフフっ…。」

 そういうとソーレはそろりと部屋を出て行こうとした。その後ろ姿にレイモンドは声をかけた。

「ソーレ嬢…私のことは許さなくていい、しかし自分のした過ちに責任を持って欲しい。」

 それはこれから公になる悪事を含めてレイモンドは忠告したのだった。

「私は何も悪いことなどしていませんわ…あなたは私と結ばれるのよ…そこにいる汚らしい愚民なんてすぐ飽きることでしょう…。」

「待てっ…!」

 そう言ってジーヌを侮辱してソーレは立ち去って言った。

 レイモンドは強く怒り後を追おうとしたが、それをジーヌは止めた。

「お待ちください。彼女は話し合いのできる状態ではありません。落ち着いてください…。」

「っ…‼︎」

 レイモンドは、自分を落ち着かせると、急いで入ってきた執事にお茶の準備を言い渡すと、ジーヌを抱きしめた。

「すまない、君には辛い思いをさせてしまったな…。」

「そんなことありません…私こそ申し訳ありませんでした…。」

「いいんだ…全ては私のした事…ソーレ嬢にもいつか分かる日がくる事を願っている。」

「…はい…。」

 そうして2人強くお互いを抱きしめあった。

 その夜、ジーヌは寝付けなく、中庭の薔薇の庭園に久しぶりに顔を出した。

 ここには、この屋敷を出ていく時以来、久しぶりに顔を出した。

「とてもいい香りね…。」

 昼間の事件で、やはり心に衝撃が強かったのだろう。薔薇達がその心を癒してくれている気がした。
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